日本人は入浴好きであり、ほぼ毎日入浴する。冬季の日本人の入浴はユニークで、熱い湯に肩まで浸かり長時間入浴する。しかしながら、この日本式入浴が、冬季に高齢者の入浴中事故死をもたらし、その数は年間18,000名にも達すると推定されている。全国11地区の浴室温熱環境調査から、脱衣室温度が低い地域ほど溺死死亡率が高いことが明らかとなった。また、冬季に浴室が寒いと訴える人ほど、湯温を高めにし、長時間入浴し、浴室での体調面での不具合の割合が高いことが明らかになっている。高齢者の心理・生理的特徴として、高齢者は若い人に比べ、寒さ暑さを感じにくく、寒冷・暑熱曝露に伴う血圧変動も著しいことが知られている。北海道以外の冬季戸建住宅の夜間脱衣室温度は平均15℃未満で、高齢者入浴死のリスクを増大させている。安全で快適な冬季の入浴には、脱衣室温度は20℃以上必要で、高齢者の場合には25℃が推奨されよう。