抄録
本研究では沿岸部にある2 つの水族館の複数室において,空気中の塩分をインピンジャー法によって水中に捕集し,イオンクロマトグラフィーを用いてその水溶液のイオン成分濃度を検出することにより,室内の気中塩分濃度を測定した.その結果,室内の気中塩分濃度は1~230 μg/m 3 であった.室内の気中塩分濃度は,海水槽の無い室に比べて海水槽のある室で高く,外気の塩分濃度よりも高い場合が確認されたことから,室空気中の塩分は水槽の海水面から発生したものと思われる.また,室内空気と海水との接触面積が大きく,換気による外気導入量が少ない部屋ほど,空気中の塩分濃度は高かった.このことから、測定を行った水族館において室間の塩分濃度の差は,海水水槽からの塩分発生と換気の収支によって説明できる可能性が示唆された.また,室内空気中の塩分は,外気からの侵入よりも海水槽からの塩分生成が大きく寄与している可能性がある.