日本病院総合診療医学会雑誌
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Print ISSN : 2185-8136
総説
安全な中心静脈カテーテルのための医療安全体制の構築
三木 保
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2012 年 3 巻 2 号 p. 33-41

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抄録
中心静脈カテーテル(以下CVライン)は周知のごとく今日に日常臨床において必須の医療手段である。 しかしその合併症には極めて稀であるが重要臓器損傷による死亡例が報告されている。 当院では 2003 年の約半年の短期間に 2 例のCVライン設置に伴う極めて重篤な致死的合併症例を経験した。その 1 例は手術場で挿入され術翌日に心肺停止状態に成り,以後脳死状態となり死亡した。 手術という本来の医療行為とは別の副次的な行為で,最悪の結果に至り,安全な医療を期待され患者の信頼を大きく裏切る結果となった。 これに対して当院では「再発防止」の至上命令のなか対策委員会が設置され,2004 年 10 月 25 日にCVライン安全部会が発足し,CVラインセンターの開設とCVライン設置ガイドラインの運用が開始された。 この結果新しいシステムの運用前後での合併症の発生率は 9.1 %から 5.3 %(すべて一過性)に激減させることが可能となった。 またCVラインの指導教育についても,初期研修医に対しては施行医基準を設定し,講習会,見学会,筆記試験,実技試験の義務化を行っている。 これによりCVライン挿入の技術修得のみならず,過去のCVラインに関する事故経験の風化を回避し,医療安全の意識改革に繋がっている。現在,このシステムの運用のコンセプトが当院でのすべての医療安全体制の構築への原点なりつつあり,失われた信頼回復に繋がるものと期待している。
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© 2012 日本病院総合診療医学会
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