抗HIV薬の進歩によりAIDSによる死亡者数は激減し,HIV感染者は健常者と同等の寿命が得られるようになった。一方,悪性新生物,心血管障害などAIDS以外の疾患や長期の代謝系合併症が問題視され,近年は喫煙の関与も指摘されている。
HIV感染者の半数以上に何らかの精神神経疾患があり,日常診療においての重大問題である。
精神神経疾患は
①日和見感染症
②HIV脳症
③精神疾患
④薬剤によるもの
⑤その他,に分類できる。
HIVの感染によりHDLコレステロールが低下するとの報告がある。
また,多くの抗HIV薬は脂質代謝異常を引き起こす。ただし,本邦のHIV感染者における脂質代謝異常に関する研究は少ない。特に臨床医にとって問題となるのは,抗HIV薬治療中に脂質代謝異常を認めた場合の
①抗HⅣ薬を変更する
②脂質代謝異常治療薬を追加する,の選択である。
HIV感染者での骨粗鬆症の有病率は 15 %であり,骨減少症は 67 %に認められる。
抗HIV薬の中では特にプロテアーゼ阻害剤とツルバダ
®️について,骨代謝障害に関する注意が必要とされている
当科でのアンケート結果では日本人HIV感染者の 40.2 %が喫煙者であった。
海外の報告では喫煙と日和見感染症発症との関連が示されている
ガイドラインによりHIV感染者には多種のワクチンの接種が推奨されているが,実際に接種されている率は多くない。免疫不全者であるからこそ,確実にワクチンを接種するべきである。
HIV感染者の増加と生命予後の改善に伴い,病院総合医がHIV感染者と接する機会が増えることが予測される。今後は数 10 年単位の外来管理が必要となり,日和見感染症予防・薬剤副作用の管理・メンタル的問題の対応などの総合的医療が必要となる。病院総合診療医のHIV感染診療における重要性はさらに増えるであろう。
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