日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
3 巻, 2 号
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総説
  • 小出 典男
    2012 年 3 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
  • 林 純
    2012 年 3 巻 2 号 p. 7-12
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
  • 内藤 俊夫
    2012 年 3 巻 2 号 p. 13-16
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    抗HIV薬の進歩によりAIDSによる死亡者数は激減し,HIV感染者は健常者と同等の寿命が得られるようになった。一方,悪性新生物,心血管障害などAIDS以外の疾患や長期の代謝系合併症が問題視され,近年は喫煙の関与も指摘されている。 HIV感染者の半数以上に何らかの精神神経疾患があり,日常診療においての重大問題である。 精神神経疾患は ①日和見感染症 ②HIV脳症 ③精神疾患 ④薬剤によるもの ⑤その他,に分類できる。 HIVの感染によりHDLコレステロールが低下するとの報告がある。 また,多くの抗HIV薬は脂質代謝異常を引き起こす。ただし,本邦のHIV感染者における脂質代謝異常に関する研究は少ない。特に臨床医にとって問題となるのは,抗HIV薬治療中に脂質代謝異常を認めた場合の ①抗HⅣ薬を変更する ②脂質代謝異常治療薬を追加する,の選択である。 HIV感染者での骨粗鬆症の有病率は 15 %であり,骨減少症は 67 %に認められる。 抗HIV薬の中では特にプロテアーゼ阻害剤とツルバダ®️について,骨代謝障害に関する注意が必要とされている 当科でのアンケート結果では日本人HIV感染者の 40.2 %が喫煙者であった。 海外の報告では喫煙と日和見感染症発症との関連が示されている ガイドラインによりHIV感染者には多種のワクチンの接種が推奨されているが,実際に接種されている率は多くない。免疫不全者であるからこそ,確実にワクチンを接種するべきである。 HIV感染者の増加と生命予後の改善に伴い,病院総合医がHIV感染者と接する機会が増えることが予測される。今後は数 10 年単位の外来管理が必要となり,日和見感染症予防・薬剤副作用の管理・メンタル的問題の対応などの総合的医療が必要となる。病院総合診療医のHIV感染診療における重要性はさらに増えるであろう。
  • 岡田 宏基
    2012 年 3 巻 2 号 p. 17-21
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
  • 徳田 安春
    2012 年 3 巻 2 号 p. 22-27
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    臨床推論は仮説演繹法で行われる。 患者情報が収集蓄積されるにつれて診断仮説か改訂されていく。 情報を時系列的に収集するにつれて変化するダイナミックなプロセスである。 改訂を終えた診断が最終診断となる。臨床医の推論の現実を説明する理論のなかで最も有力なのが「2 重プロセス理論」である。 直感的推論プロセス(System 1 )と分析的推論プロセス(System 2)を使い分けて推論を行っている。 この総説では,直感的および分析的推論プロセスのメカニズムと主要なリソース,その利点と欠占診断工ラーを最小限にする方法について述べる。
  • 井上 和彦
    2012 年 3 巻 2 号 p. 28-32
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    酸関連疾患には,胃潰瘍・十二指腸潰瘍の消化性潰瘍と胃食道逆流症(GERD)があるが,前者はHelicobacter pylori (Hp)感染に伴う胃粘膜炎症を背景として発生することが圧倒的に多く,後者はHP未感染者で有病率が高い。 我が国におけるHP感染率は非常に速いスピードで低下しており,酸関連疾患のスペクトルの変化がみられる。HP未感染者の酸分泌能は高齢になっても保たれており,機能性ディスペプシア(FD)発生機序に胃酸が関連していることも示唆されている。 また,我が国の人口高齢化率はすでに 21 %以上となり超高齢社会に突入している。 超高齢社会や食事の欧米化により,心血管イベントのリスクが高まり,整形外科疾患も増え,低用量アスピリンやNSAIDs使用による消化管粘膜傷害も危惧される。 HP感染率が低下し,超高齢社会となった現在,GERD,FD,NSAIDs潰瘍に留意した消化器診療か必要であり,プロトンポンプ阻害剤の役割は大きいと思われる。また,HP感染の有無に注目した消化器プライマリケアの診療体系の構築も期待される。
  • 三木 保
    2012 年 3 巻 2 号 p. 33-41
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    中心静脈カテーテル(以下CVライン)は周知のごとく今日に日常臨床において必須の医療手段である。 しかしその合併症には極めて稀であるが重要臓器損傷による死亡例が報告されている。 当院では 2003 年の約半年の短期間に 2 例のCVライン設置に伴う極めて重篤な致死的合併症例を経験した。その 1 例は手術場で挿入され術翌日に心肺停止状態に成り,以後脳死状態となり死亡した。 手術という本来の医療行為とは別の副次的な行為で,最悪の結果に至り,安全な医療を期待され患者の信頼を大きく裏切る結果となった。 これに対して当院では「再発防止」の至上命令のなか対策委員会が設置され,2004 年 10 月 25 日にCVライン安全部会が発足し,CVラインセンターの開設とCVライン設置ガイドラインの運用が開始された。 この結果新しいシステムの運用前後での合併症の発生率は 9.1 %から 5.3 %(すべて一過性)に激減させることが可能となった。 またCVラインの指導教育についても,初期研修医に対しては施行医基準を設定し,講習会,見学会,筆記試験,実技試験の義務化を行っている。 これによりCVライン挿入の技術修得のみならず,過去のCVラインに関する事故経験の風化を回避し,医療安全の意識改革に繋がっている。現在,このシステムの運用のコンセプトが当院でのすべての医療安全体制の構築への原点なりつつあり,失われた信頼回復に繋がるものと期待している。
原著
  • 佐伯 俊成, 岡田 宏基, 小出 典男, 福本 陽平, 竹内 啓祐, 中村 嗣, 小谷 和彦, 中西 重清, 溝岡 雅文, 田妻 進
    2012 年 3 巻 2 号 p. 42-47
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    中国 5 県 6 施設の総合病院総合診療科及び 1 施設の開業医における初診患者 1152 例に対して,うつ状態のスクリーニングを行った。 自己評価式抑うっ性尺度(SDS))では 19. 9 %,2 項目質問法(TDSS)による医師評価では 12.4 %に中等症以上のうつ状態が認められ,先行研究の結果とも合わせ,プライマリ・ケアにおいては少なくとも約 1 割の初診患者に何らかの対応を要する中等症以上のうつ状態が存在するものと推定された。 またTDSS医師評価は,TDSS患者評価およびSDSスコアと高い相関を示し,スクリーニング法としてのTDSSの妥当性が明らかになった。 本研究の結果から,自殺予防への取り組みか急務となっているプライマリ・ケア領域においては,まず 2 項目質問法の普及・啓発によるうつ状態のスクリーニングが重要であると思量された。
  • 水島 孝明, 片岡 仁美, 村上 和敏, 花山 宜久, 金森 達也, 江原 弘貴, 廣田 大昌, 甘利 悠, 竹嶋 功人, 三好 智子, 大 ...
    2012 年 3 巻 2 号 p. 48-52
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    IgG4 関連疾患は近年注目されている。 今回,病態の解明に寄与することを目的に,第 4 階日本病院総合診療医学会で発表されたIgG4 関連疾患 39 症例を集積,検討,解析した。診断時の平均年齢は 63.0 歳で男女比は 33 : 6 で男性に多く,主訴は顎下腺腫大と糖尿病の悪化,発熱が多く,病変部位は膵,次いで顎下腺,後腹膜,涙腺の順であった。 血中のIgG4 は 907.4 士 846.0 mg/dlで 135 mg/dl以下も 4 例認められた。 PET-CTは 17 例で実施されうち 2 例( 11.8 % )(前立腺,顎下腺,膵臓,リンパ節)で集積が指摘されなかった。ガリウムシンチも 7 例で実施され,うち 3 例( 28.6 % )は集積が指摘されなかった。 生検は侵襲の少ない部位が選択される傾向にあった。組織のIgG4 /IgG細胞比は生検部位別に一定の傾向を認めなかった。薬物治療は 32 例で実施 7 例は経過観察中。 薬物はプレドニゾロンが 31 例。再発は 5 例に認められた。 1 例で本態性M蛋白血症の合併が認められた。本疾患は多様な症状で発症するため,本疾患を念頭に置いた診療が重要となる。またIgGの値は本疾患のスクリーニングには適さない。
症例報告
  • 浦 和也, 古庄 憲浩, 古賀 恒久, 小川 栄一, 谷合 啓明, 林 純
    2012 年 3 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    血球貪食症候群は様々な原因によりマクロファージが異常活性化し,多臓器に障害を来す病態である。 著者らは菊池病により血球貪食症候群を発症した一例を経験したので報告する。 ムンプス感染による血球貪食症候群の既往のある 30 代女性が,入院約 1 週間前から発熱,頸部リンパ節腫脹が出現し,抗菌薬内服で改善せず入院となった。 進行する血球減少,脾腫が認められ,血球貪食症候群の既往があったため,骨髄穿刺を施行し血球貪食症候群と診断された。 造影CT及びPET-CTでは頭頸部のリンパ節腫脹が認められたが,悪性腫瘍を示唆する所見は認められなかった。腫大していた頸部リンパ節の穿刺吸引細胞診で菊池病の診断とされた。診断後,経ロPrednisolone治療により,臨床症状と所見は速やかに改善し退院した。その後一年間の経過にて再燃は認められていない。本症は菊池病により血球貪食症候群を発症していること,血球貪食症候群を再発していることから非常に稀な症例であると考えられた。
  • 三浦 於菟, 板倉 英俊, 田中 耕一郎, 植松 海雲, 奈良 和彦, 芹澤 敬子, 河野 吉成, 西村 哲也, 桑名 一央, 塚田 心平, ...
    2012 年 3 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    産後の体調不良に漢方エキス製剤が有効だった 2 例を経験した。 症例 1 は 30 歳女性で,出産五ヶ月後よりの不安焦燥感と無気力感で来院。 他にのぼせ,動悸,あくび,めまい,羸痩などを訴えていた。 産後鬱病と診断し女神散合甘麦大棗湯投与で軽快をみた。症例 2 は 37 歳女性で,出産直後よりのホテリを伴う頭痛で来院。他に月経障害,立ち眩み,不眠多夢などを訴えていた。 身体性表現性障害と診断し,芍帰調血飲投与で軽快をみた。女神散と芍帰調血飲は,産褥などの女性特有の病態治療のために創成され,体力低下などの肉体的愁訴と「こころ」の不安定状態を改善する効能がある。 東洋医学的適応病態は共に,血虚が気虚より強い体力低下と気滞である。女神散は気滞と「こころ」の不安定症状がより強く熱証がある点が相違点となる。女性の特性を重んじかつ心身に働きかける事が,西洋医学的治療にはない特徴であり,今後はより多用すべき方剤といえる。
  • 安河内 由美, 古庄 憲浩, 豊田 一弘, 谷合 啓明, 小川 栄一, 貝沼 茂三郎, 岡田 享子, 村田 昌之, 丸山 治彦, 林 純
    2012 年 3 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    2009 年 9 月から 2010 年 7 月に高IgE血症および末梢血好酸球数増多を伴い,血清学的にウエステルマン肺吸虫症と診断された 4 例を経験した。 うち 3 例で咳嗽・喀痰などの呼吸器症状を伴い,胸部X線写真にて胸水,気胸,肺野浸潤影を,うち 2 例でCT検査にて肺病変に加え肝・脾に低吸収域や皮下脂肪織の濃度上昇を認め,肺への移行途中の迷入が疑われた。うち 1 例で喀痰からウ工ステルマン肺吸虫虫卵が検出された。 4 例中全例で淡水産力ニの生食歴があり,2 例は日本人とその配偶者の在日韓国人で, 他の 2 例は在日中国人であった。いずれもプラジカンテル( 75 mg/kg/日)の 3 日間内服にて症状および検査値ともに改善した。
  • 関 彰吾, 舛形 尚, 森 俊博, 中原 麻衣, 犬飼 道雄, 樋本 尚志, 合田 文則, 岡田 宏基, 横田 恭子, 千田 彰一
    2012 年 3 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    症例は 75 歳女性。日中,草取り作業をしたところ,夜になり悪寒を伴う 39 ℃の発熱が出現した。 CRP,ALP,γ- GTPが高値であり,血液培養ではEscherichia coli(E.coli)が検出された。 入院時CTでは多発性肝嚢胞と肝実質の感染巣が描出された。 Drip Infusion Cholecystocholangiography(DIG)-CTでは多発性肝嚢胞による肝内胆管の圧排が認められたため,多発性肝嚢胞に起因する胆汁うっ滞による胆道感染が考えられた。 抗菌薬投与により軽快退院したが,その後4年間で草取り作業を行うと必ず同様の発熱発作を4回繰り返し,血液培養では毎回E.coliが検出され,同様の抗菌剤投与により改善した。 多発性肝嚢胞では胆汁うっ滞を原因とする胆道感染を繰り返す危険性を考慮しつつ経過観察する必要があると思われた。
  • 平峯 智, 村田 昌之, 大西 八郎, 小川 栄一, 谷合 啓明, 古庄 憲浩, 林 純
    2012 年 3 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    30代,男性。四肢関節周囲の紅斑に対してステロイド内服が開始されたが(治療開始時 AST/ALT : 18 / 26 IU/L),漸減中に増悪したため再度血液検査が施行されたところ,高度の肝酵素上昇(AST/ALT : 944 / 1887 IU/L)を認めB型急性肝炎と診断された。 治療前のヒト免疫不全ウイルス(HIV)スクリーニング検査が陽性であったため,B型肝炎ウイルス(HBV)/HIV重複感染の治療目的に当科転院となった。 転院時データはさらに増悪しておりAST/ALT : 2933 / 4929 IU/L,PT 41 % ),テノホビル,エムトリシタビンを含む多剤併用抗レトロウイルス療法を開始したところ,3 日目よりALT が低下し始め,8 週目にHBs抗原,18 週目に血中HBV DNAは陰性化した。 皮疹は肝炎の改善と共に消失しており,急性HBV感染関連の皮疹が肝酵素上昇に先行し,さらにHIV重複感染であった稀な 1 例と考えられた。 成人のB型急性肝炎例においても皮疹が出現し得ること,B型肝炎診療における初診医のHIVスクリーニング検査の重要性を改めて認識する必要がある。
  • 豊國 剛大, 平岡 栄治, 三好 園子, 久保川 修, 西村 光滋, 森 寛行, 安田 尚史, 金澤 健司, 原 賢太, 秋田 穂束
    2012 年 3 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    褐色細胞腫に対する治療には手術,化学療法,放射線療法等があるが,根治や予後を改善させると証明されたものはない。今回,薬物療法にて症状コントロールが困難であった傍神経節腫の肝転移に対して経カテーテル的肝動脈塞栓術 (TAE)を施行した一例を経験したので報告する。 症例は 73 歳の女性で,以前に傍神経節腫と診断され,今回,薬剤抵抗性の頻脈性心房細動による動悸を認め,当院入院となった。CTにて肝に多発する腫瘤を認め,肝生検にて傍神経節腫の肝転移と診断,TAEを施行した。TAE後,血中・尿中のカテコールアミン値の低下,腫瘍縮小,脈拍低下,心機能の改善を認め,自覚症状も消失した。7 カ月後も血中・尿中のカテールアミン値は再上昇を認めず,新たな転移巣の出現も認めていない。TAEは症状コントロールに有効な治療法の一つになり得ると考えられた。
症例短報
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