日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
入院初期における転倒転落の予測因子の検討
—転倒予防チェックリスト作成のために—
宮越 浩一高橋 静子古田 康之夏目 隆史
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2010 年 11 巻 2 号 p. 114-118

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抄録

 医療機関においては転倒事故に対する十分な対策が求められる。今回われわれは簡便な転倒対策を構築する目的で、入院初期に得られる複数の所見より転倒転落を予測する因子の抽出を試みたので報告する。

 2008年11月より3ヶ月間の間に当院に入院した連続症例を対象とした。転倒転落を予測する因子として17項目からなるチェックリストを看護師により入院初期(24時間以内)に評価した。本チェックリストは年齢、3項目の身体機能、5項目の精神機能、3項目の複合要因、5項目のその他の因子より構成されている。このチェックリストは当院の既存のチェックリストに、先行研究で指摘されているいくつかの転倒予測因子を追加することにより作成した当院独自のものである。

 対象となったのは2,258例であり、このうち転倒転落に至ったのは55例であった。ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。ここでは転倒転落の既往がある、座位バランス不良、ふらつきがある、貧血、介助が必要にも関わらず一人で動こうとする、の5項目が抽出された。Receiver Operating Characteristic曲線では、曲線下面積が0.776となっていた。予測精度は感度0.709、特異度0.799であり、入院初期に得られる情報のみからある程度のスクリーニングが可能であった。今後さらに簡便かつ精度の高い転倒予測手法の構築を進めたいと考える。

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