日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
がん化学療法注射せんにおける疑義照会の分析
田隝 博樹上島 健太郎三浦 遼子井上 忠夫
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2010 年 11 巻 2 号 p. 130-133

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抄録

 国際医療福祉大学三田病院では注射オーダリングシステムが稼働しておらず、注射せん監査、薬歴管理、輸液ラベル発行などの業務はすべて薬剤師の手により行わなければならない。がん化学療法注射せんは手書きの処方せんで運用している。このため、記載漏れや誤記載、投与量などの疑義を抱えた処方せんが薬剤部に提出されていることが少なくない。今回、2008年10月〜2009年3月の6ヶ月間に、がん化学療法注射せんにおいて行った疑義照会を内容と重要性について次のごとく分類した。内容分類は①投与量、②投与間隔、③投与時間、④レジメン、⑤支持療法、⑥重複処方、⑦その他の7分類とした。重要性分類は危険度に応じて A 、Bの2分類とし、A>Bの順に危険度が高いとした。

 対象期間内に薬剤部へ2,390枚のがん化学療法注射せんが提出されていた。 そのうちの173枚 (7.2%) で疑義照会が行われ、 110枚 (4.6%) が処方変更となっていた。 疑義照会は①投与量62枚、 ②投与間隔13枚、 ③投与時間21枚、 ④レジメン34枚、 ⑤支持療法32枚、 ⑥重複処方 6 枚、 ⑦その他 5 枚であった。 重要性分類は A 55枚、 B 118枚であった。

 細心の注意を払い処方を行う必要のあるがん化学療法注射せんでも7.2%にも上る疑義照会が行われ、 4.6%が処方変更となっていた。 抗がん剤の過量投与につながる恐れのある処方は特に重要なものであり、 薬剤師による処方監査・疑義照会の必要性が再確認された。

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