日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
Print ISSN : 1881-2503
ISSN-L : 1881-2503
事例報告
連携医の専門性の違いによる前立腺がん地域連携への影響
井口 厚司
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 12 巻 1 号 p. 8-13

詳細
抄録

 地域連携クリティカルパスを用いて診療連携を行っている前立腺がん、およびその疑いの患者を対象に、連携先が泌尿器科専門医である場合と非専門医である場合とでがんの診断能力、および連携を受け入れている患者の心理に違いがないか検討した。

 2007年11月から2009年2月までの期間に地域連携クリティカルパスを用いた147名のうち、77名は泌尿器科医と、70名は非泌尿器科医と連携していた。地域連携クリティカルパス導入後2010年2月までに国立病院機構九州医療センター泌尿器科を再受診した患者は、それぞれ10名(13.0%)、14名(20.0%)であった。専門医からの再受診の理由はPSA(Prostate Specific Antigen)上昇が10名中8名(10.4%)で、うち6名が生化学的再発、1名が前立腺がんと診断された。一方、非専門医からの再診理由は14名中PSA上昇が12名(17.1%)で、5名が再発、2名が前立腺がんと診断された。経過観察ができている専門医受診患者64名、非専門医受診患者54名では良好な経過が得られており、両者の間で前立腺がんの診断能力に差はみられなかった。

 また、同時に行った60名から得られた患者アンケート調査では、診療連携を受けている患者の心理には連携先の専門性による大きな違いはみられなかった。たとえ連携医が専門医でなくても、地域連携クリティカルパスの達成目標をわかりやすく設定することにより円滑な診療連携が可能になると思われる。

著者関連情報
© 2011 特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
前の記事 次の記事
feedback
Top