2011 年 12 巻 2 号 p. 85-89
がん化学療法により生じる悪心・嘔吐には、発現リスクに応じた制吐剤の予防投与が有効とされる。国立病院機構長良医療センターでは、制吐剤であるグラニセトロン投与の要否、およびデキサメタゾンの投与量が漫然と設定されていたため、化学療法委員会が中心となりNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインに則して制吐剤の見直しを行った。
院内で登録された呼吸器領域の腫瘍に対する化学療法レジメンにおいて、全22レジメン中14レジメンの制吐剤が変更になった。制吐剤を変更したレジメンにおいて、変更後1年間に投与した制吐剤の薬剤費を、変更を行わなかった場合の試算と比較した結果、年間49.5%の節減効果が得られた。また、制吐剤の変更によりグラニセトロンを削除した3week-ドセタキセル治療レジメンにて治療された肺がん患者を対象に、変更前後1年間における悪心・嘔吐の発現率を比較した。その結果、グラニセトロンの削除により悪心・嘔吐の発現率の増加は認められなかった。
ガイドラインに則して制吐剤を適切に選択することにより、悪心・嘔吐の発現率を増加させることなく薬剤費の節減が得られ、患者負担を軽減することができた。