医療機関において、事故防止対策への取り組みは、必須事項となっている。昭和大学病院では、個々の附属病院が独自にインシデントレポートや事故報告書等の様式を定め、医療事故の防止に努めてきたが、附属病院間での詳細な比較は、充分にはおこなわれていなかった。そこで、2010年1月から12月までの当学の4つの附属病院A〜D病院において報告されたインシデント・アクシデントレポート11,171件について、病院間の相違を検証した。
各病院のインシデント・アクシデントレポートの件数は、A病院4,304件、B病院1,975件、C病院4,331件、D病院562件だった。報告レベルに関しては、全ての病院で、レベル2までが80%以上、レベル3aまでが90%以上だった。行為別事象としては、AからDすべての病院で、誤薬・誤注射といった薬品に関するものが一番多く、続いて転倒・転落、ルート・チューブだった。これらの三大事象のそれぞれの割合は、各病院によって異なっている。職種別の報告では、全ての病院で看護師からの報告が最も多く、全体の80%以上を占めている。医師からの報告は少なく、全ての病院で全体の6%に過ぎなかった。インシデント・アクシデント報告形式は、病院によって相違がある。今後は、分類基準やフォーマットを統一して、全附属病院が統一したレポート様式を使用することにより、情報の共有化を図り、より効率的で有効な医療事故予防対策を検討していく必要があると思われる。