2012 年 13 巻 1 号 p. 17-21
患者の不安・不満を軽減する方法を検討するため、急性期病院において退院支援を受けた、あるいは長期に入院した423患者・家族に質問紙調査を行った(回答率44.4%)。調査は、退院の話が出てから退院するまでの期間の満足(「退院満足」)を、入院全経過についての満足(「入院満足」)と区別して行った。患者・家族は治療・予後と退院後生活に不安を示し、入院期間の長さ・職員の対応・治療効果に不満を持っていた。
50.4%の回答者が、医療者との関わりによって、不安軽減と現状認識ができる「心理変化」を生じていた。「心理変化」の有無はχ2検定で、相談相手が医師であることと、患者が相談相手の対応に満足すること(「対応満足」)に有意に関係していた。一方、退院を支援する地域医療連携室の職員に相談した場合は、「心理変化」と相関せずに「対応満足」と相関し、「心理変化」・「対応満足」・「退院満足」・「入院満足」の間には互いに有意な正の相関があった。重回帰分析では、「退院満足」には「心理変化」と「対応満足」が有意な影響を与え、「入院満足」には「対応満足」のみが有意に影響したことから、「心理変化」と「対応満足」は患者満足に関わる別々の要因と考えるのが適切であると示唆された。
治療結果の満足を必ずしも与えられない医療における患者満足には、医療者との関わりがもたらす患者・家族の手続き的公正感が大きな役割を果たすと考える。