日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
受傷前の移動能力・認知機能により層別化した大腿骨頚部骨折地域連携クリティカルパスの検討
小川 優美佐藤 真由美神川 康也
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2012 年 13 巻 1 号 p. 7-10

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抄録

 帝京大学ちば総合医療センターの地域連携クリティカルパス(以下連携パス)の特徴は、受傷前屋外移動能力と認知機能により連携パスを分類し、治療期間や退院基準を設定していることである。屋外手放し歩行自立群をA、屋外補助具歩行自立群をB 、屋外移動監視または介助群をCとし、認知症症例にはCが適応される。連携パスの対象となった86例(A 34例、B 25例、C 27例)の治療期間のバリアンス分析と転帰について調査した。バリアンス発生率は A 47%、B 60%、C 22%であった。バリアンス要因はA・B共に荷重制限や既往症などの患者要因が最も多く、次に介護力不足や在宅設備の遅れなどの社会的要因であり、Cは患者要因のみであった。退院時屋外歩行自立獲得率は A 65%、B 40%、C 7%、自宅復帰率は A 88%、B 84%、C 63%であり、屋外歩行が自立していなくても自宅退院できることが示唆された。またCでも自宅退院しており、 受傷前の身体精神機能に対する家族の理解力や介護力、家屋環境などの環境因子が促進因子として関与したと考える。目標治療期間と移動における退院基準の妥当性は乏しかったが、受傷前屋外移動能力・認知機能により連携パスを層別化することは、治療期間や退院時の歩行能力を予測し、患者・家族を含めチーム全体で情報を共有することで包括的な支援を可能にするという点で有効である。

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