2012 年 13 巻 1 号 p. 31-35
硬膜外麻酔は現在広く普及しており、多くのメリットがエビデンスとして報告されている。デメリットとして、極めてまれではあるが、重篤な合併症も一定の頻度で発症しうる。トヨタ記念病院産婦人科では無痛分娩や帝王切開術の麻酔、婦人科手術の全身麻酔に併用するなど、積極的に硬膜外麻酔を施行してきた。
電子カルテの医師記録に硬膜外麻酔シート(テンプレート)を作成し、2008年6月より運用を開始した。電子カルテに搭載されたデータウェアハウスを用いて2010年5月までのデータを集計し、対象となった423例について検討した。硬膜外麻酔における質評価指標(Quality Indicator)として、硬膜穿刺の発症率、再刺入率、有効率を設定し、その有用性を検討した。その結果、硬膜外麻酔を始めて2年以内の若手医師は、上級医と比較して硬膜穿刺の発症率と再刺入率が高く、有効率が低い傾向を認め、これらの3つの指標が質評価指標として有用である可能性が示唆された。当科での今回の結果から、硬膜外麻酔シートを他の診療科でも使用すれば、容易に診療科間の質評価指標の比較検討ができると考えられた。さらに今後、病院間でこれらの質評価指標を比較検討できれば、硬膜外麻酔の安全性と有効性が客観的に評価できる。