日本医療マネジメント学会雑誌
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総説
医師事務作業補助者の現状と課題
中村 雅彦
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2012 年 13 巻 2 号 p. 48-53

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抄録

 わが国では、2008年に病院勤務医の負担の軽減を図り、診察に専念できる環境を整備することを目的に、医師事務作業補助体制が導入された。医師の指示の下に、事務職員が診療録や退院時要約、診断書、意見書などの医療文書の作成を代行することが認められ、業務にあたる医師事務作業補助者の育成が進められている。医師事務作業補助者登場の背景には、わが国の医師の絶対数の不足のほか、多岐にわたる書類作成や病院運営のための委員会・会議への出席など、診察以外の業務の負担増が指摘されている。さらに、長年、改善が叫ばれている診療録作成・管理の点からも、「開示に値する」診療録の作成など医療文書の質向上への医師事務作業補助者に対する期待は大きい。導入後、業務負担軽減に関する医師への各種アンケート調査でも、高い満足度が示されている。また、最近では、勤務医の時間外勤務の減少や経費の削減など、導入の効果を数量的に評価した報告が多数されている。今後、医師事務作業補助者が医療文書作成の専門家として自立するためにも、生涯にわたる教育プログラムの策定が望まれる。また、さらなるスキルアップや社会的な認知度向上のため、学会などによる情報交換の場の提供や、上級資格の認定制度も必要であろう。医療文書作成の専門家という新たな職種が、医療界に誕生することを期待したい。

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© 2012 特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
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