日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
大学病院における転倒・転落による骨折の現状
高島 幹子山田 楼子佐藤 幸美伊藤 亘近藤 克幸岡田 恭司浅沼 義博
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2012 年 13 巻 2 号 p. 59-64

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抄録

 秋田大学医学部附属病院で2004〜2009年度に経験した転倒・転落に伴う骨折事例を検討した。転倒・転落に関するインシデントレポート2,241事例のうち、骨折は25例(1.1%)であった。転倒・転落率は、1.76〜2.31‰であり、また骨折を伴った転倒・転落率は、0.00〜0.04‰であった。男性10名、女性15名であり、25例中11例は夜間(21時〜6時)に発生していた。骨折部位は、大腿骨頸部が11例と最多であり、つづいて上肢骨5例、腰椎3例等であった。大腿骨頸部骨折11例の年齢は72±15歳であり、それ以外の骨折14例と比べて高い傾向にあった。また骨折発生から退院までの期間は、大腿骨頸部骨折11例では64±56日であり、それ以外の骨折14例と比べて有意に長かった。骨折に対する治療として手術が施行されたのは25例中10例であり、内訳は大腿骨頸部骨折9例、上腕骨々折1例であった。

 骨折した25例を転倒・転落防止の観点から提唱された川村分類に準じて分類すると、1群3例、2群3例、3群(判断力あり・排泄行動以外)9例、4群(判断力障害)10例であった。3群9例の特徴は、下肢の骨折が多い(7例)ことであり、4群10例の特徴は体幹・上肢の骨折が多いこと(8例)、ならびに直近のアセスメントスコアが10以下と低くても骨折する症例がある(4例)ことであった。

 以上より骨折予防の観点からは、川村分類3群と4群に対する転倒・転落予防に取り組むこと、ならびに患者毎の骨折のリスク評価を行うことが重要であると考えられた。

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