日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
摂食回復支援食「あいーと®」提供の意義と価値
山中 英治西村 智子
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2012 年 13 巻 3 号 p. 139-144

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抄録

 咀嚼や嚥下の障害、体力の低下などにより普通の食事の摂取が困難な状態では、きざみ食やペースト食など(以下従来食)が提供されることが多い。しかしこれらの食事は外観が悪く、食欲が減退する。食は人生の楽しみであり、「美味しく食べる」ことはQOLにとって重要である。

 そこで、外観と風味は通常の食事に類似しているが、口腔内でペースト状になり容易に溶解する摂食回復支援食「あいーと®」が開発された。破砕されあるいは潰された形状の従来食を摂取している患者を対象として、「あいーと®」を3日間提供し、前後の従来食の摂取時と食欲や食事の感想、喫食率を比較検討した。

 さらに「あいーと®」と病院で調理する「きざみ食」の提供に要する作業時間と経費についても比較して費用対効果について考察した。

 「あいーと®」は従来食と同様に咀嚼困難患者にも安全に摂取できた。喫食率は「あいーと®」摂取前後で有意差を認めなかった。患者の感想としては「あいーと®」が従来食に比べて食事に対する満足度が有意に高かった。作業時間は「あいーと®」が短く調理の手間が少なかったが、食費としては高価であった。

 経費はやや高価になるが、外観の美味しそうな「あいーと®」は、「食べる喜び」を実感できるため、従来食よりも患者のQOLを向上させるので、提供する価値があると考えられた。

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