近年の高齢妊娠の増加に伴い、1割程度であった悪性腫瘍や脳血管障害などの偶発合併症が原因である間接産科的死亡の占める割合が3〜5割と増加している。妊産婦の脳血管障害は、発症頻度は低いものの、発症した場合の母体死亡や神経学的後遺症のリスクは高い。トヨタ記念病院では、子癇発症後に痙攣発作が重積し、無症候性ではあるが脳梗塞が残存した症例を経験した。母体の脳血管障害では妊娠高血圧症候群やHELLP症候群、DICなどの病態を合併することが多く、産婦人科や新生児科だけでなく神経内科や集中治療科、麻酔科、脳外科等と連携し管理を行うことが重要であるが、当院ではその連携の構築が不十分であった。そのため、このような症例を繰り返すことのないよう、新生児科や関連診療科と協議の上、「妊産婦の子癇の管理方針」を作成し、共通の治療方針の下、協力して治療を行える体制を確立した。これらを導入後2例の子癇の症例を経験したが、2例とも後遺症なく治癒した。その導入と有用性について報告する。