日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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事例報告
新しい医療連携の形
健康増進施設と連携した変形性膝関節症トータルサポートチームの結成
中村 立一松儀 怜霜下 和也飴谷 礼子柿田 真弓
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2013 年 14 巻 2 号 p. 53-57

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抄録

 近年、地域連携クリティカルパスやチーム医療の推進が強調されてきたが、医療機関の垣根を越えた連携の報告は少ない。しかし慢性的な整形外科疾患を持つ患者を医療機関だけで抱えていると、患者の心に「医療機関でリハビリテーションをしてもらう」という受動的な姿勢が生まれることも多い。そこで我々は、健康寿命を延ばす「介護予防」実現のために、患者自身が積極的に自己の健康増進に取り組む姿勢が重要と考え、隣接する健康増進施設(いわゆるスポーツジム)と連携したチーム作りを考案した。まず変形性膝関節症をモデルに選択し、2011年8月に変形性膝関節症トータルサポート研究会(team TS-KOA;team Total Support for Knee OA)を立ち上げ、運動指導員・医師・理学療法士が意見交換をしながら運動プログラムを作製した。さらにチームには看護師・栄養士などが加入して総合的な患者指導にあたるとともに、やわたメディカルセンターと健康増進施設の紹介・連絡が円滑に行えるシステムを構築した。これにより、当院からジムへの紹介者数は2010年度71名(51名入会)が2012年度には209名(98名入会)と大幅に増加した。しかし混合診療禁止などの法的制限により、入院患者に対してこのサポートを導入することが困難なことが、現時点における大きな障壁である。医療機関の垣根を越えた連携は介護予防の普及にとどまらず、国が主導する医療費の削減にも有効な新たな連携の形であり、このサポートの有効性を検証した上で行政に働きかける必要があると考えている。

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© 2013 特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
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