2013 年 14 巻 2 号 p. 72-75
全国に約8700の病院がある中で約800施設ある400床以上のいわゆる大規模病院では、電子カルテ導入が進んでいる。紙カルテから電子カルテに移行する場合、多くの施設では移行期を設けず一期的に移行が行われるため、導入期の混乱により外来が混雑し患者の受診動向が変動する可能性がある。
京都府立医科大学附属病院は2008年に、受診者の受診抑制策を計画することなく、一部オーダリングシステムの運用から一期的に電子カルテ導入を行った。電子カルテ導入4年後を安定期と考え、導入期と安定期の患者の受診動向を比較検討し、導入期に患者混雑や患者受診動向の変化が発生していたのか後方視的に解析した。
導入期・安定期ともに外来患者数や在院時間は金曜日が有意に低かった。また、患者数が少ない診療科に受診するからといって必ずしも在院時間が短いわけではなく、受付時刻が遅いほど患者数や在院時間が短いという患者の受診動向に変動はなかった。安定期に比較し導入期では在院時間が有意に増加していたが、外来患者数で補正すると在院時間はほとんど変動していなかった。大学病院の電子カルテ導入に当たっては受診抑制策を取らなくても患者の日内、週内の受診動向にも大きな変動はきたさず、有意な混雑は発生しないことが想定された。