日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
病棟の退院調整担当看護師育成の取り組み
研修プログラム実施1年後の分析と評価
大村 由紀美岩谷 友子
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2014 年 15 巻 2 号 p. 119-123

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抄録

 K大学病院医療連携センターは、2009年より病棟における退院調整担当看護師の育成を開始した。2010年に同病院の全病棟から選出された看護師26名を対象とした退院調整担当看護師育成研修プログラムが実施され、2011年度からは研修に参加した看護師を中心に退院調整担当看護師定例会議を組織化し、全病棟内での退院調整ラウンドや、各病棟の退院調整担当看護師を窓口として退院調整の連携を行っている。

 今回、研修プログラムの受講者を対象に、退院調整に対する意識や行動、ディスチャージプランニング評価尺度、看護活動の変化についての自記式質問紙調査を、研修プログラムの実施前、実施後、実施1年後の計3回行い、長期的視点で評価した。

 分析対象者19名の結果、研修後から1年が経過するまでに退院調整の意識が高まり、社会資源の情報を得るように心がけ、退院調整の専門性を高めようとする看護師の数に有意な増加があった。また、退院調整を実施する看護師の数が増え、入院時から退院後の生活を考えた情報収集や介入を行うようになった等の行動の変化がみられた。

 したがって、退院調整担当看護師育成研修プログラムは、退院調整に関する意識や行動に肯定的な変化をもたらし、複合的な学習形態として有用であった。しかし、全ての退院調整プロセスの実施には至らず、今後は、退院調整ラウンドや退院調整担当看護師定例会議をよりいっそう活用し、継続教育を図る必要がある。そして、病棟の退院調整担当看護師だけでなく、医師や病棟スタッフにも協力を働きかけ、院内全体で退院調整に積極的に取り組んでいきたい。

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