医療の高度化、複雑化、国民の医療に対するニーズの多様化により、病院情報システム(Hospital Information System、HIS)を導入する病院が増加している。HISでは、導入後の期間、進展度により医療者の満足度が異なり、システム導入目的が変化するなど、病院経営におけるHISの役割が変わると想定される。
本研究では、2006年時点にHISを有する病院を対象に2008、2010年の2回アンケート調査を実施し、情報統合と共有レベルの進展度、満足度、システム導入目的、病院経営上のHISの役割の変化を検討した。
有効回答率は、2010年調査31.1%(488/1,567)、2008年調査20.3%(328/1,616)であった。2010年は2008年と比較し電子化及びペーパーレス化が進んでおり、満足度は、導入期間よりHISの進展度に影響されることが示唆された。導入目的では、病院全体のサービスや質の向上等をあげる病院が多かった。導入成果は、ペーパーレス化の病院で高い傾向にあり、HISの進展により成果が高くなると考えられた。導入目的と進展度の関係では、①病院経営上より重要な役割を担い、かつ達成度が高まったもの、②役割は変化しないものの、業務効率向上が達成度上昇をもたらしたもの、③役割、達成度ともに変化しないものに大別された。