日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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ISSN-L : 1881-2503
16 巻, 2 号
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原著
  • 是村 利幸, 大堀 昇, 湯沢 八江
    原稿種別: 原著
    2015 年16 巻2 号 p. 70-74
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2021/10/11
    ジャーナル フリー

     医療安全対策に取り組む上で主体となる担当者の多くは看護師である。医療安全対策は、業務内容が広く、明確になりにくい部分もあり、その業務を担う看護師にとっては、様々な思いがあると考えられる。そこで、医療安全業務に携わる看護師の仕事意欲に影響する要因を探索する研究を行った。全国の国公私立大学病院とその分院に加え、都内近郊の約200床以上の全施設総計429施設に研究協力を要請し、了承の得られた103施設で医療安全業務に専任(専従)、兼任を問わず従事する看護師141名を対象にした。対象者141名からの回答者数は126名で、その特徴は、大規模施設に属する専任で医療安全業務を行う管理職が多かった。仕事意欲への影響要因については、重回帰分析を行い、自分で仕事の進め方が決められること、リーダーシップを発揮して業務に取り組んでいること、医療安全業務に関する自己研鑽を行っていることなどが肯定的に働く要因として選択された。マイナス要因としては、部署への人員が十分に配置されていないことが選択された。中央社会保険医療協議会のデータからも安全管理部門の人員不足は裏付けられており、それが仕事意欲に対しても影響していることがわかった。

  • 瀬戸 加奈子, 松本 邦愛, 北澤 健文, 藤田 茂, 花岡 晋平, 長谷川 友紀
    原稿種別: 原著
    2015 年16 巻2 号 p. 75-81
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2021/10/11
    ジャーナル フリー

     医療の高度化、複雑化、国民の医療に対するニーズの多様化により、病院情報システム(Hospital Information System、HIS)を導入する病院が増加している。HISでは、導入後の期間、進展度により医療者の満足度が異なり、システム導入目的が変化するなど、病院経営におけるHISの役割が変わると想定される。

     本研究では、2006年時点にHISを有する病院を対象に2008、2010年の2回アンケート調査を実施し、情報統合と共有レベルの進展度、満足度、システム導入目的、病院経営上のHISの役割の変化を検討した。

     有効回答率は、2010年調査31.1%(488/1,567)、2008年調査20.3%(328/1,616)であった。2010年は2008年と比較し電子化及びペーパーレス化が進んでおり、満足度は、導入期間よりHISの進展度に影響されることが示唆された。導入目的では、病院全体のサービスや質の向上等をあげる病院が多かった。導入成果は、ペーパーレス化の病院で高い傾向にあり、HISの進展により成果が高くなると考えられた。導入目的と進展度の関係では、①病院経営上より重要な役割を担い、かつ達成度が高まったもの、②役割は変化しないものの、業務効率向上が達成度上昇をもたらしたもの、③役割、達成度ともに変化しないものに大別された。

事例報告
  • 黒川 勝己, 田嶋 憲一, 加原 雅教, 石合 瑞恵, 松岡 邦彦, 久徳 弓子, 砂田 芳秀
    原稿種別: 事例報告
    2015 年16 巻2 号 p. 82-86
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2021/10/11
    ジャーナル フリー

     2010年から取り組んでいる、岡山県倉敷市児島地区での認知症地域連携クリティカルパス(以下、地域連携パスと記載)への取り組みを報告した。川崎医科大学神経内科と児島医師会が中心となり「児島神経疾患連携の会」を立ち上げた。ワーキンググループを選定し、医師会館にて地域連携パス作成を協議するとともに、定期的に学術集会を開いて、地域の医師・医療スタッフに対する啓発活動を行った。2012年5月から地域連携パスを正式に運用し、介護と医療の垣根が低くなった、介護からの情報が役立った、家族にとって思い出の一冊となった、などの効果がでている。本地域連携パスは冊子式ではなく、ファイル式にしている点が特徴であり、汎用性の高いものとなっている。今後の超高齢社会における地域連携パスのあるべき姿を示すひとつの参考になるのではないかと考える。

  • 成瀬 友貴, 乾 由明
    原稿種別: 事例報告
    2015 年16 巻2 号 p. 87-91
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2021/10/11
    ジャーナル フリー

     業務日報を用いて急性期リハビリテーション部門における理学療法士の業務量を調査した。理学療法士一人一日あたりの勤務時間は平均9.8時間、患者治療は平均6.0時間であった。業務分類別ではカルテ記載や移動送迎、各種書類作成といった患者治療に付随した業務(間接業務)が業務全体の21%を占めていた。また間接業務量は患者一人あたりの単位数と有意な相関関係を認め、患者一人あたりの単位数を上げることは間接業務量の削減に繋がることが示唆された。人員の充実化が求められる急性期リハビリテーションにおいて、患者一人あたりの単位数を上げることで間接業務量を削減しつつ、人員増員による診療体制の強化が業務効率化として有用ではないかと考えられた。

  • 大重 育美
    原稿種別: 事例報告
    2015 年16 巻2 号 p. 92-98
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2021/10/11
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、新人看護師の職業性ストレスおよびコミュニケーションスキルの時期的な変化、職業性ストレスとコミュニケーションスキルの関連を明らかにすることである。研究方法は、新人看護師35名を対象として、職業性ストレス尺度とコミュニケーションスキル尺度を用いて質問紙調査法を行った。調査時期は、入職後3ヶ月、6ヶ月、11ヶ月の年3回で行った。分析方法は2つの尺度で3時点の変化をFreidman検定で比較し、尺度間の関連性はSpearman順位相関係数を求めた。その結果、職業性ストレスは次第に増加傾向にあったが、コミュニケーションスキルは変化しなかった。職業性ストレスは、コミュニケーションスキルの話のスムーズさとアサーションに関連があった。

     以上より、新人看護師は、1年間を通して職業性ストレス尺度は少しずつ高まる傾向があり、会話がスムーズにできない、アサーティブな対応ができなくなる可能性が示唆された。

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