日本医療マネジメント学会雑誌
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原著
病院の院内体制整備が重大な医療事故の経験、医療事故及びインシデント報告件数にもたらす影響
2004年、2011年、2014年、2015年の全国調査を用いた縦断的研究
藤田 茂飯田 修平永井 庸次嶋森 好子西澤 寛俊森山 洋長谷川 友紀
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2017 年 18 巻 3 号 p. 127-132

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抄録

 患者の死亡や後遺障害を引き起こすような重大な医療事故と、医療事故及びインシデントの院内報告件数の全国的な動向は十分に明らかにされていない。本研究では、重大な医療事故の経験、医療事故及びインシデントの報告件数の推移と、医療安全管理者の配置、病院機能評価の認定、その他の因子との関係を明らかにした。

 全日本病院協会の全会員病院を対象とした郵送法による調査を2004年、2011年、2014年、2015年に実施した。調査項目は病院の属性、最近3年以内の重大な医療事故経験の有無、医療事故及びインシデントの年間報告件数とした。2011年〜2015年の推移を解析し、2004年は参考値として示した。

 各調査年の調査票回収率は18〜28%であった。2011年から2015年まで、重大な医療事故を経験した病院は増加し(23%、29%、p=0.02)、1病床当りの報告件数の中央値は増加傾向(2.7件、3.3件)にあった。増加には、病院機能評価の認定と医療安全管理者の配置が関連していた。病院の機能・規模および病院機能評価の認定、医療安全管理者の配置で調整すると、調査年と重大な医療事故の経験には関連が認められなかったが、報告件数には関連が認められた。

 重大な医療事故を経験した病院の増加は、院内体制整備により医療事故の検知能力が向上したためであると考えられた。報告件数の増加は、院内体制整備に加え、本研究で把握していない他の何らかの取り組みの成果であると考えられた。

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