日本医療マネジメント学会雑誌
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18 巻, 3 号
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原著
  • 影響因子の探索と方策の検討
    谷野 祐子, 比江島 欣愼, 岩﨑 和代
    原稿種別: 原著
    2017 年 18 巻 3 号 p. 122-126
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     本研究は、助産師の医療安全意識に影響を与える因子を明らかにすることを目的に実施された。 研究協力の承諾が得られた関東圏68病院1005名の常勤助産師を対象に、2013年7月29日から11月30日に量的横断研究を実施した。調査項目は基本属性、意識の測定尺度として助産師の自律性測定尺度、日本版バーンアウト尺度、および自作の医療安全意識項目である。分析は基本統計量算出、各尺度の下位尺度間の相関関係の検討、医療安全意識を目的変数、属性、助産師自律性測定尺度の下位尺度、日本版バーンアウト尺度の下位尺度を説明変数とした重回帰分析を行い、医療安全意識に関連する因子を検討した。質問紙回収率は74.8%、有効回答率59.5%であった。重回帰分析の結果、助産師の医療安全意識には、「医療安全研修への参加」、「助産研修への参加」、「助産師経験年数」、「臨床実践能力」、「自立的判断能力」、「情緒的消耗感」、「個人的達成感の後退」が有意な影響を与えていた。助産師の医療安全意識を高めるためには、キャリア支援やストレス軽減のための職場環境やサポート体制の検討が必要であると示唆された

  • 2004年、2011年、2014年、2015年の全国調査を用いた縦断的研究
    藤田 茂, 飯田 修平, 永井 庸次, 嶋森 好子, 西澤 寛俊, 森山 洋, 長谷川 友紀
    原稿種別: 原著
    2017 年 18 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     患者の死亡や後遺障害を引き起こすような重大な医療事故と、医療事故及びインシデントの院内報告件数の全国的な動向は十分に明らかにされていない。本研究では、重大な医療事故の経験、医療事故及びインシデントの報告件数の推移と、医療安全管理者の配置、病院機能評価の認定、その他の因子との関係を明らかにした。

     全日本病院協会の全会員病院を対象とした郵送法による調査を2004年、2011年、2014年、2015年に実施した。調査項目は病院の属性、最近3年以内の重大な医療事故経験の有無、医療事故及びインシデントの年間報告件数とした。2011年〜2015年の推移を解析し、2004年は参考値として示した。

     各調査年の調査票回収率は18〜28%であった。2011年から2015年まで、重大な医療事故を経験した病院は増加し(23%、29%、p=0.02)、1病床当りの報告件数の中央値は増加傾向(2.7件、3.3件)にあった。増加には、病院機能評価の認定と医療安全管理者の配置が関連していた。病院の機能・規模および病院機能評価の認定、医療安全管理者の配置で調整すると、調査年と重大な医療事故の経験には関連が認められなかったが、報告件数には関連が認められた。

     重大な医療事故を経験した病院の増加は、院内体制整備により医療事故の検知能力が向上したためであると考えられた。報告件数の増加は、院内体制整備に加え、本研究で把握していない他の何らかの取り組みの成果であると考えられた。

  • 實金 栄, 木村 麻紀, 福武 まゆみ, 住吉 和子, 平松 貴子, 中嶋 和夫, 太湯 好子
    原稿種別: 原著
    2017 年 18 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     本研究は看護介入によって患者にもたらされる主観的なQOLを測定する「看護関連QOL尺度」の開発を目的とした。

     看護関連QOL尺度の開発に必要なデータを得るために、入院期間が2日以上で退院日が決定している患者を調査対象とした。調査票は1255人に配布し、統計解析に際しては、回収できた1193人のうち調査項目に欠損のない820人のデータを使用した。看護関連QOLの測定項目として先行研究を参考に「健康」4項目、「生活」7項目、「存在」4項目を準備した。測定尺度の妥当性は内容的妥当性を探索的因子分析で、また構成概念妥当性を確認的因子分析で検討した。信頼性は内的整合性をω信頼性係数で検討した。妥当性と信頼性の検討に先立ち、多分相関係数により冗長性の高い項目を削除した。次いで、探索的因子分析により複数の因子に0.3以上の因子負荷量を示す項目を削除し、因子の解釈を行った。抽出された因子モデルのデータへの適合性は構造方程式モデリングによる確認的因子分析で検討した。

     結果「健康」2項目、「生活」4項目、「存在」2項目を一次因子、看護関連QOLを二次因子とする3因子二次因子モデルはデータに適合し、看護関連QOL尺度の構成概念妥当性が検証された。

     考察では、「看護関連QOL尺度」の構成概念妥当性の交差妥当性を検討しつつ、看護的な介入内容のみならず看護関連QOLに影響を及ぼす要因の解明が課題となることを議論した。

  • テキストマイニング分析による可視化の試み
    加藤 尚子, 山口 佳子, 降旗 光太郎, 橋本 光康
    原稿種別: 原著
    2017 年 18 巻 3 号 p. 141-146
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     多職種連携教育において学生が何を学んだのかを検討するために、連携実習の経験の可視化を試みた。2013年にA大学で実施した実習の課題レポートをテキストとして、テキストマイニング分析を行った。テキスト中一番多く用いられた単語である「他職種」に着目し、出現パターンを定量的に分析することで表現の傾向を把握した。テキストから抽出された単語の関連性を辿ると、学生たちの実習経験の様相として、他職種と対峙することによって自職種の自覚が高まり、多職種からなるチームの意義を深く考えるようになったことが示唆された。

事例報告
  • 茂木 美香, 石原 裕起
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 147-152
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     緩和ケア病棟における転倒転落を防止するために、転倒転落チェックボード(以下、ボード)を作って患者情報を可視化・共有化し、この運用と成績について検討した。

     2011年7月〜2012年3月(2011年度)に発生した転倒転落事例報告と看護師意識調査の分析を行い、転倒転落防止対策としてボードを作り、全入院患者の援助行動レベル(自立度)、排泄方法、注射・チューブ類、ベッド柵・位置等の情報を一覧表示した。ボード内容は毎日見直し、スタッフ全員で共有した。ボード運用開始前の2011年度と開始後の2012年度(2012年4月〜2013年3月)の転倒転落発生率、状況、要因を比較し、また開始後の看護師意識調査を行った。

     転倒転落件数・発生率は、2011年度の22件、7.5件/千人・日に対して2012年度は13件、2.7件/千人・日と有意に減少した(p<0.01)。排泄行動時の転倒転落は2011年度の14件から2012年度は8件に減少し、発生率は有意に改善した(p<0.05)。ボード開始後の意識調査では、毎日の患者状態の変化を確認するようになった、患者の行動パターンを予測して援助や環境整備をするようになった、受け持ち患者以外の患者にも配慮するようになった等の改善を認めた。

     緩和ケア病棟において転倒転落チェックボードで全患者情報を共有し、毎日の見直しと確認を行った結果、転倒転落の防止に有用であった。

  • 一般病棟に焦点を当てて
    久保田 千景
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     一般病棟における看護師の終末期がん患者の在宅療養移行に向けての家族支援の実践と認識について明らかにした。家族支援について実践している内容は【家族とコミュニケーションを図り、在宅療養についての情報提供を行う】【在宅療養移行について、家族の思いを傾聴したり、家族員同士の対立への調整を行う】等であった。家族支援について認識している内容は【多職種と家族で連携して在宅療養移行に関わる必要性】【家族の個別性を重視し家族を全体として捉える必要性】等であった。在宅療養移行に向けての家族支援として、看護師は患者の意向を尊重した看護を認識していたが、実践内容としては挙げられていなかった。在宅療養移行において、患者・家族・看護師間での思いの差異が存在していることから、患者の意向のみを尊重した実践を行うことは難しく、家族も含めた看護を実践していると考えられた。また、家族の一員が終末期がん患者であり、在宅療養移行することは家族全体に影響を及ぼすことを認識していたが、実践内容では家族員の関係性に働きかける視点は不足していた。

  • 原田 紀美枝, 大重 育美
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 160-166
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     本研究は、病院と介護老人福祉施設との連携体制を強化するため、地域医療連携室に専任看護師を配置した効果を検証することを目的とした。対象は、高齢者医療を担う中規模病院で地域の複数の介護老人福祉施設(以下、「特養」という)の協力病院である。地域医療連携室には専従の社会福祉士が配置されていたが、医療処置がある状態で退院する患者が増加し、地域医療連携室で退院支援を専任で行う看護師を配置することになった。専任看護師は、訪問看護の経験があり、病院と協力関係にある特養の入所者を多く受け入れていた病棟の看護師長が選任された。着任後、専任看護師は特養との会議を行い連携上の課題を抽出した。また、特養を訪問し介護の実態を確認した。その結果、夜間看護師が不在であることから医療処置は特養看護師が勤務している時間に合わせて実施されていることが明らかになった。特養には夜間の看護師の配置基準がなく、医療処置がある患者の援助は、病院と特養での実施手順に違いが生じていた。病院と特養の援助方法の違いを解消するため、専任看護師は定期的に特養看護師に治療経過や看護情報を提供し、特養が適切に再入所の準備ができるように支援した。さらに、専任看護師は院内の体制強化のため、退院支援看護師会を発足し、特養での生活を見据えた退院支援ができる看護師の育成を図った。したがって、地域医療連携室に専任看護師を配置することは院内外の連携強化につながることが示唆された。

  • 三好 正堂, 篠原 敦
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 167-170
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     高齢化社会を迎え、リハビリテーション(以下、リハビリ)を要する患者が急増している。できるだけ多くの患者を迅速に受け入れるためには、回復期リハビリ病棟の在院日数を短縮する必要があり、そのためにはリハビリ・プログラムも工夫しなければならない。

     入院時の説明で、脳卒中のリハビリは2ヶ月で完了できること、その後はできるだけ自宅へ退院し、次の患者にベッドを譲ってほしいと説明した。プログラム:理学療法では麻痺肢の治療でなく、非麻痺側下肢の強化に主眼を置き、1日400〜600回の起立-着席運動を行った。これは集団訓練を行うと容易であった。作業療法では、麻痺手の機能回復とともに、移乗、車いす駆動などで下肢の強化に力点を置いた。ADLの回復は下肢強化で自動的に可能になる。言語摂食療法では言語療法に限定し、嚥下訓練は行わなかった。エビデンスの得られた嚥下訓練はほとんどないためである。時間にして1日4時間理学療法/作業療法の訓練室に留まるようにした。

     われわれの回復期病棟で治療した脳卒中自験例(254例)と、全国調査(9,041例)との成績を比較した。入院時FIMには差がなかったが、退院時FIMは自験例94.6点、全国調査88.3点、平均在院日数は自験例45.0日、全国調査81.3日、自宅退院率は自験例80.3%、全国調査66.3%で、それぞれ差がみられた。

     非麻痺側下肢の筋力を強化し、運動量を増やすプログラムにより、在院日数を短縮することができた。

  • 佐々木 仁美, 柴田 雅子, 鈴木 千恵子, 泉對 福江, 角田 博子, 大日方 絵美子
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     2015年度から、Patient Flow Management(以下PFM)を開始し入院前から退院を見据えた患者への支援として入院面談を実施している。実際に、入院面談を受けた患者・家族の認識と受けなかった患者・家族の認識について、半構成的面接で内容分析しその課題を明らかにする。結果、入院面談は、入院生活に対するイメージができ、治療や手術・中止薬に関する理解ができていること、不安を抱いている事や退院後の生活に戸惑いがあることなどが明確になり有用であった。

  • 及川 知子, 丸山 尚嗣
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 176-179
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     船橋市立医療センターの医師事務作業補助者(当院呼称Doctor aid:以下、DA)が行っている病棟回診記録入力補助(以下、回診補助)は、回診内容の記録だけでなく、入院時指示の変更、処置内容や検査内容の入力、カンファレンス内容の記録も含まれている。しかし、扱っている疾患の特性や、回診時に行われる処置の内容が診療科毎に異なるため、DAによって入力内容の質に差が生じていた。そこで回診補助者の教育体制を確立し、業務の質を担保するため、新人(初めて回診記録入力補助を担当するDA)を対象にラダーチェック評価を行うこととした。2人組(新人DAと回診担当DA)で回診につくOJT(On-the-Job Training)研修を一定期間経た後、回診担当DAが新人DAのラダーチェック評価を行う。評価は3段階を設け、総合評価基準として各項目の半数以上が「できている」という合格ラインに達していれば、新人DAが独り立ちし、回診についても良いこととした。業務についてラダーチェック評価を行うことにより、新人DAは自分の到達レベルを把握することができ、客観的にも可視できるので有用であった。今後もDAが携わっている様々な業務について、高度な質を担保しながら、更に業務拡大していくことが医師から期待されている。

  • 吉永 拓真, 脇黒丸 倫奈, 齋藤 潤栄
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 180-183
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     公益社団法人鹿児島共済会南風病院では、医師事務作業補助者(ドクターズクラーク(Doctor's Clerk、以下 DC))の役割として、外来診療の支援業務、文書作成業務を中心に行ってきた。臨床現場からの要望に応えるべく対応し、医師からの依頼は増え続けてDCの残業時間増となった。そこで、外来診療密度の高い時間にDCを集中配置した。また、文書作成代行業務のマネジメント担当の配置を行い業務の効率化を図った。結果として、これまでDCを配置できていなかった診察室へもDCを配置することができた。また、2015年度の診断書記載件数は対前年度の7%増加、退院サマリー記載件数は対前年度の73%増加、残業時間を21%短縮することができた。

     さらに、データ分析サポート、臨床研究サポート、外国語サポートに焦点を絞り医師の支援体制の構築を図った。日常診療以外の支援依頼も多く、これらの期待が大きいことがわかった。急性期病院において多様な補助形態によるDCの取組みは、医師の負担軽減につながり、病院の発展に貢献できると期待している。

  • 卒後臨床研修評価機構の第三者評価を活用した取り組み
    小谷 知広, 小山 信一, 宮部 剛実, 黒川 正夫
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     NPO法人卒後臨床研修評価機構による第三者評価(2012年3月29日初回受審、2年間の認定)の結果を受けて、更新審査(2014年2月27日受審)に向けて行った「要検討」項目の改善活動とその結果について報告する。

     初回審査後、まず要検討とされた項目を一覧表にまとめ、結果の検討を行った。検討した結果、指摘されている項番:Pg(Postgraduate)は異なるが指摘内容は同じであり、4つの課題に分類することができた。

     この4つの課題に対する改善を順次行って更新審査を受審した結果、4年間の認定となった。報告書では病院長自らがリーダーシップを発揮し、病院全体でより良い研修環境づくりに取り組み、院内の全スタッフが臨床研修指導者として研修医を指導できる環境づくりを行っていると高く評価された。しかし、より質の高い臨床研修病院として成長していくために、新たな項目での指摘も受けた。

     卒後臨床研修評価機構による第三者評価を受審したことで大阪府済生会吹田病院の研修プログラムや研修環境を客観的に知ることができ、維持していくなかで当院の強み・弱みが明らかになった。弱みを改善し、強みをより強化することで、臨床研修の質をさらに向上させることができると考えられることから、今後も第三者評価を活用したより良い臨床研修環境づくりに取り組む。

  • 医療職と非医療職、血清抗体価測定結果による比較
    脇本 寛子, 矢野 久子, 青山 恵美, 堀田 法子
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、多職種で構成される外来職員の麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘に対する免疫獲得状況とワクチン接種プログラムの構築に向けた課題を明らかにすることである。A県内3病院の外来職員428人を対象とし、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘のIgG抗体価を測定し、罹患歴、抗体検査歴、ワクチン接種歴に関する質問紙調査を行った。

     抗体陽性者は、麻疹395人、風疹372人、流行性耳下腺炎400人、水痘404人であった。医療職329人と非医療職99人の比較では、風疹において非医療職は医療職より抗体陽性者の割合が低かった(p<0.05)。「4疾患全て抗体陽性者」は308人、「4疾患いずれか抗体陰性/判定保留者」は120人であった。「今回の採血結果で抗体陰性の場合にワクチン接種を受けない」と回答した割合は、医療職より非医療職の方が高い傾向にあり(p=0.061)、「4疾患全て抗体陽性者」より「4疾患いずれか抗体陰性/判定保留者」の割合が高かった(p=0.012)。「自分に接種が必要なワクチンが分からない」と回答した割合については、医療職と非医療職では有意な差はなく、「4疾患いずれか抗体陰性/判定保留者」の方が「4疾患全て抗体陽性者」より割合が高かった(p=0.003)。免疫を獲得しないまま外来業務に携わることは、病院にウイルスを持ち込む感染源となる可能性があり、他者への影響が甚大となる危険性がある。今後の課題は、抗体検査やワクチン接種の実施ができるように整備すること、それらの結果を記録で保管が出来るようにすること、特に非医療職にはどの疾患の抗体検査やワクチン接種を実施したのかを正しく記録すると共に理解できるよう丁寧に説明する必要がある。さらに、ワクチン接種の対象者に対しては、抗体検査結果に応じて各自に必要なワクチン接種の内容について丁寧に説明を行うことである。

  • 笹野 央
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 18 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     順天堂大学医学部附属順天堂医院では、2008年8月より広域抗菌薬を対象に特定抗菌薬使用届出制度を開始した。2012年度に病棟薬剤業務実施加算(以下、病棟業務)が新設され、薬剤師の病棟業務時間の確保により医師へ届出書の提出を促す体制をとった。今回、病棟業務開始前後の特定抗菌薬使用届出率(届出率)および抗菌薬使用密度(AUD)を比較して、病棟業務による届出率の推移、およびAUDの変化に対する影響について検討した。届出率は病棟業務開始前の平均55.8%から、開始後の平均93.1%へ顕著に増加した。AUDではキノロン系が減少し、カルバペネム系が増加した。結果、病棟業務は、届出率向上に有用であることが示された。更なる抗菌薬の適正使用を推進するためには、患者個々における使用状況に薬剤師が介入する必要があると考える。

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