2017 年 18 巻 3 号 p. 160-166
本研究は、病院と介護老人福祉施設との連携体制を強化するため、地域医療連携室に専任看護師を配置した効果を検証することを目的とした。対象は、高齢者医療を担う中規模病院で地域の複数の介護老人福祉施設(以下、「特養」という)の協力病院である。地域医療連携室には専従の社会福祉士が配置されていたが、医療処置がある状態で退院する患者が増加し、地域医療連携室で退院支援を専任で行う看護師を配置することになった。専任看護師は、訪問看護の経験があり、病院と協力関係にある特養の入所者を多く受け入れていた病棟の看護師長が選任された。着任後、専任看護師は特養との会議を行い連携上の課題を抽出した。また、特養を訪問し介護の実態を確認した。その結果、夜間看護師が不在であることから医療処置は特養看護師が勤務している時間に合わせて実施されていることが明らかになった。特養には夜間の看護師の配置基準がなく、医療処置がある患者の援助は、病院と特養での実施手順に違いが生じていた。病院と特養の援助方法の違いを解消するため、専任看護師は定期的に特養看護師に治療経過や看護情報を提供し、特養が適切に再入所の準備ができるように支援した。さらに、専任看護師は院内の体制強化のため、退院支援看護師会を発足し、特養での生活を見据えた退院支援ができる看護師の育成を図った。したがって、地域医療連携室に専任看護師を配置することは院内外の連携強化につながることが示唆された。