日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
精神科病院におけるエラーに気づく看護師の要因
上野 美由紀山田 和子森岡 郁晴
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2018 年 19 巻 2 号 p. 74-80

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抄録

 医療事故を防止する要因に関する先行研究において、エラーによく気づくことのできる看護師の存在が認識されている。本研究は、精神科病院における看護師を対象に自己および他者のエラーに気づく看護師の要因を明らかにすることを目的とした。対象者は、精神科単独の2病院の臨床経験3年目以上の看護師217名であった(精神群)。無記名の質問紙調査を実施し、自分自身と他者のエラーに気づいた経験、看護業務の中で起こしたエラーの経験(臨地エラー)、社会的スキル、患者安全文化、属性を尋ねた。有効回答率は75.6%であった。対照群は、一般の11病院に勤務する3年目以上の看護師164名とした。エラーに気づく関連要因の検索には、多重ロジスティック回帰分析を用いた。精神群で自分自身のエラーに気づいた者(76.8%)は、対照群(70.7%)に比べて高かった。他者のエラーに気づいた者(87.2%)は、対照群(86.6%)と同様であった。精神群における自分自身のエラーに気づく関連要因は「臨地エラーの経験がある」、「アクシデントの経験がある」であった。他者のエラーに気づく関連要因は「管理者である」、社会的スキルの下位尺度「高度のスキルが低い」であった。精神科病院における安全対策をすすめるためには、エラーとアクシデントの経験を活かし、看護師の管理職が有するような安全意識を全職員がもつことが肝要であることが示唆された。

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