医療マネジメント学会雑誌
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離反患者の原因分析とその影響
和田 ちひろ
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キーワード: 離反患者, 信頼財, ロコミ
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2001 年 2 巻 2 号 p. 153-157

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抄録

製造業では欠陥品が品質改善に用いられるが、サービス業では離反してしまった顧客から学び、サービスの質を向上させる必要がある。本研究では医療機関から離反した患者に注目し、年間どのくらいの離反患者が存在するのか、また離反の原因について分析した。A病院での一年間の手術件数1904件のうち手術をキャンセルした患者は38名であり、キャンセル理由は (1) 待機中死亡、 (2) 回復、 (3) 時期的問題、 (4) 体調不振、 (5) 地理的問題、 (6) サービスに不満であった。キャンセル患者のうち21名に電話インタビュー調査を行なった結果、他院で手術を受け、以後来院しなくなった「離反患者」は6名であった。治療結果ではなく医療サービスプロセスが離反患者に与える影響が大きいことが示唆された。また医療は評価するのが困難であるため、代替尺度を用いて評価している点、医療は信頼財という特性をもつという点口コミがもたらす影響が大きいことも示唆された。さらに離反患者が医療機関の経営にもたらすであろう影響も示唆された。院内での患者満足度調査だけでなく、年間の患者離反数、離反理由を調べ、サービス改善の糸口にし、さらなる離反を防止する、離反患者によるネガティブな口コミの波及を最小限にとどめる方策を検討するなど離反マネジメントを行なうことが今後、必要であると考える。

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