医療マネジメント学会雑誌
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クリティカルパスの投薬指示における薬剤名指定の解析
抗生剤などの標準化の傾向の考察
松島 照彦
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2001 年 2 巻 2 号 p. 162-167

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抄録

クリティカルパスにおいて使用薬剤名までを指定することは、医師の裁量権や症例の個別性の点から困難を伴うと考えられていたが、第1回クリティカルパス全国研究交流フォーラムに展示されたクリティカルパスを解析したところ、薬剤名の指定、標準化が広く進んでいることが明らかになった。薬剤の指定は抗生・抗菌剤、点滴基剤、鎮静・抗不安薬、下剤・緩下剤、抗凝固剤、非ステロイド系抗炎症剤 (non-steroid anti-inflammatory drugs: 以下、NSAIDS) に多く、繰り返し指定と強い寡占化傾向が見られた。選択の要因としては、薬剤の歴史、作用の広範確実性、安全性とともにevidence-based medicine (以下、EBM) の存在が大きく作用していると考えられた。クリティカルパスの普及が薬剤メーカーに対するEBMを作るインセンティブとして働き、また、クリティカルパスは標準化された医療を通じてEBMを創出する理想的な場とも言える。今後、薬剤師がクリティカルパスの作成に関与していくことが標準化に拍車をかけることも期待される。クリティカルパスの普及や採用は薬剤の価格設定に影響を与える可能性も出てくる。薬剤名の指定は医療の標準化のみならず、医療事務、原価計算、包括化における医療と薬業のスタンスにおいても重要な意味を持つと考えられる。

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