2001 年 2 巻 2 号 p. 168-173
幽門側胃切除術を施行した41例を対象とし、クリティカルパス (以下パス) 導入の意義を検討した。パス前群20例とパス後群21例とを、入院日数、術後治療経過、術後回復過程の観点より比較検討し、以下の成績を得た。
全入院期間は、パス前群31.4±5.3日、パス後群20.9±3.4日であり、パス後群で有意に短縮した。術前・術後の入院日数もともにパス後群で有意に短縮した。
半抜鈎日、全抜鈎日、胃チューブ抜去日、酸素投与期間、輸液投与期間も全てパス後群で有意に短縮し、治療の標準化、効率化が達成されたことが明らかであった。
術後回復過程については、排ガス日はパス前群3.8±1.1日、パス後群3.1±0.9日であり、パス後で早い傾向にあるものの有意ではなかった。しかし、水分摂取日は、パス前群3.8±0.6日、パス後群2.8±0.7日であり、パス後群で術後有意に早く水分摂取が可能となっていた。
また、8例の患者に外来での非構成的面接を行い、パス導入により (1) 安心感が得られる、 (2) 積極的・前向きな姿勢になれる、 (3) コミュニケーションツールとなる、 (4) 手引きとなるなどのパス導入への肯定的意見が得られた。
以上により、パス導入により治療経過が標準化され、治療・検査・ケアの点で効率的な入院治療が行われたことが明らかとなった。また、パスによって患者が自分自身の術後回復過程や退院予定日を知ることができるため、目標を持ち、積極的に闘病生活を送るようになると考えられた。