医療マネジメント学会雑誌
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インシデント報告活動の職種による差違
石橋 克彦菅田 賢治杢重 和枝岩森 洋光波 康壮
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2003 年 3 巻 4 号 p. 635-642

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抄録
インシデント報告活動をより効果的に行うため、その分析を行うと共に全職員を対象にアンケートを実施し、職種間の差違を検討した。
当院 (252床) では6ヶ月で641件のインシデント報告があり、看護科が半数 (55.7%) を占めた。スタッフ一人あたりの報告数は薬剤科が最も多く、医師が最も少なかった。アンケートによると、全体の78.1%でインシデント報告の提出経験があり、医師、事務局、食養科で提出率が低かった。インシデント報告の提出理由としては、患者と直接向き合う職種である放射線科、歯科、リハビリテーション科、看護科では自己反省の意識が強く、検査科、看護科、医師では業務の簡素化を望む声が強い。インシデント報告提出を阻害する要因として、多忙であることと報告すべきかどうか不明な事例であったとの回答が多く、特に事務局、食養科で後者が顕著であった。
看護科を部署別に検討すると、インシデント報告を出す理由として自己反省をあげた部署、また同僚・先輩に言われて書いた率が高い部署ほど一人あたりの報告数が多く、草の根的意識が提出数の増加に結びつくものと思われた。一方得られた情報を日常業務に還元するには上司の働きかけも大切であった。インシデント報告活動はナレッジマネジメントの一種であり、暗黙知が形式知として認知されるためには、草の根的手法と組織としての指導力のいずれもが必要である。
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