2014 年 11 巻 p. 21-29
本研究は,歩数計を用いた大学体育実技授業が受講者の授業時間内身体活動量に与える影響を,無作為割り付け介入試験によって検証し,大学体育授業時間内における身体活動量をより効果的に増大させる方法を開発・実践するために資する重要な基礎資料を得ることを目的として行った.159人を授業のクラスごとに無作為に対照群と介入群に振り分け,欠席やデータ欠損がなかった対照群43人,介入群62人を解析の対象とした.両群ともにサッカーの授業時に歩数計を装着させ,それぞれ4回の授業を行った.第1回目の授業はベースラインの測定として,両群ともに,歩数計のディスプレイをテープで隠し,学生が値を確認できないようにして歩数を計測した.対照群は全4回の授業において同様に歩数値を隠したのに対し,介入群の第2回目〜第4回目(介入1週目〜介入3週目)の授業では,学生が歩数値を授業中常時確認できるようにして,歩数と得点で試合の勝敗を決定する等,歩数や活動レベルを強く意識させ,競い合って活動量を増大させるように仕向けた.その結果,対照群と介入群におけるベースライン時の歩数データを比較すると,対照群の歩数は4571 ± 129歩,介入群の歩数は4502 ± 123歩であり,両者の間に統計上の有意差は認められなかった.しかしながら,対照群の歩数は経時的に有意な増減が認められなかったのに対し,介入群の歩数はベースラインから徐々に増加し,介入2週目(5189 ± 130歩)と介入3週目(5593 ± 119歩)の値はベースラインに比して有意に高い値であった.特に介入3週目の歩数は,ベースラインから26.9 ± 4.1%も増大していた.以上のことから,大学体育実技授業時に歩数計を用いて勝敗と歩数や活動レベルを関連させることでこれらを強く意識させ,履修学生同士における身体活動量の競い合いや励まし合い誘起させると,受講者の授業時間内の歩数が顕著に増大することが示された.