2014 年 11 巻 p. 31-38
本研究は,歩数計を用いた大学体育バスケットボールの授業が受講者の歩数を増大させるか,さらに,歩数が増大するとすれば,得点や勝敗(勝ち点)に影響を及ぼし得るか,検討した.被験者は,一般教養科目としてのバスケットボールの体育実技を履修した大学1年生37名であり,合計4回の授業で歩数計を用いて歩数の値を計測した.歩数計を装着した1回目および2回目では,歩数計のディスプレイをあらかじめビニールテープで覆い,歩数の値を隠したSealed条件で授業を行った(S条件).これに対し,3回目および4回目の授業では,ディスプレイをビニールテープで覆うことはせずに,歩数を表示するOpen条件で授業を行った(O条件).また,授業中に実施した試合(ゲーム)の得点や勝ち点を記録し,各チームを歩数の値で歩数高値群と歩数低値群とに分けて解析を行った.その結果,S条件の歩数に比して, O条件の歩数は有意に増大した.さらに,O条件において,ゲームにおける得点や勝敗(勝ち点)を比較すると,歩数高値群の得点は,歩数低値群のそれよりも有意に高値を示した.しかしながら,勝ち点では歩数高値群の方が高値を示す傾向があったものの,両群の間で有意差は認められなかった.以上のことから,歩数計という補助的ディバイスを用いた大学体育バスケットボールの授業は,受講者が自身の歩数値をモニタリングすることによって確認可能となることから,授業内の運動量が増大することが示唆された.さらに,この授業内運動量の増大は,ゲームにおける得点を増大させ,チームの勝利する確率を高める傾向があるという点で有益なものである可能性が考えられた.こうした授業時の受講者の運動量の増大は,学生の挑戦達成や楽しさ実感の機会を増やす等,授業運営という観点からもより一層の教育効果を有する授業実施方法である可能性が高く,今後の継続的な実践とさらなる詳細な検討が期待されるところである.