2014 年 11 巻 p. 39-45
本研究は体育科教員を目指すF大学スポーツ科学部の4年次生を対象に、教育実習による教員としての資質能力の変化を検討するため、教員資質能力自己評価尺度を用いて教育実習前後での変化を検討した。その際に、F大学スポーツ科学部において教職履修者を対象に選択科目として開講している学内実習(教職事前実習)の受講者と非受講者別で検討することとした。また、教職事前実習の成果を明らかにするために、教育実習前における教員資質能力自己評価尺度の構成因子を受講者と非受講者のグループ間で比較することによって、教職事前実習による成果と今後の課題を明らかにすることを目的とした。その結果、実践的指導力と自発的行動力では、教職事前実習の受講グループ、非受講グループともに教育実習前後で有意な得点の向上がみられ、教育実習期間中の授業計画の作成や授業の実施、またそのなかで経験する担当教員や他の実習生などとの積極的な交流や発言力などがこれらの向上に影響したものと推察される。グループ間の教育実習前における比較では、実践的指導力と対人関係能力において有意な差がみられ、教育実習の前に教職事前実習を体験したことで、実際の教育現場における教育活動を経験した分だけ自信として表れたものと推察される。教育実習期間中における実践的指導力や自発的行動力の向上に対人関係能力が影響を与えている可能性が示唆されたことから、これからの教職事前実習の指導上の課題としては、担当クラスの受講生や担当教員と積極的なコミュニケーションを図らせ、同時にクラスを担当し授業を行なうことへの責任感や緊張感を持たせる指導を、担当教員の指導上の留意点として認識しておく必要性が示唆された。