2014 年 11 巻 p. 47-55
本研究は,南インド,ケーララ州Keralaを発祥とし伝承される身体技法のカラリパヤットKalarippayattuを対象とする.カラリパヤットが伝承地ではどの程度心身へ効果があると認識され伝承されているのかを整理したうえで,大学体育での実技授業において,エクササイズが日本の大学生の心身へどのような効果をもたらすのかを,実験から明らかにすることを目的とする.研究方法は現地調査に加え,2012年度後期の授業内で一過性感情尺度WASEDAを用いた質問紙調査,心拍数計測,長座体前屈計測である.現地調査から対象には身体の柔軟性向上や身体のリラックス,脳の活性化など,心身への良好な効果があることが指摘されてきた.実験の結果,感情についての変化が明らかになった.なかでもエクササイズにより,活性感情を示す高揚感,落ち着きリラックスした状態を示す落ち着き感が増加した.これは伝承地で指摘されてきたエクササイズによる脳の活性化,および身体のリラックスや心身の調整機能に一致する効果であると考えられる.カラリパヤットが健康的な身体技法であると伝承者らが信じているのは,具体的には心理状態を活性化させると共に,より落ち着きリラックスした状態にさせることと示唆された.