2014 年 11 巻 p. 65-78
【目的】本研究は,大学体育授業の長期的効果について調査することを目的とした.
【方法】対象者は,大学体育授業に参加した学生224名だった.その対象者は介入群104名(男性49名,女性55名)と非介入群120名(男性52名,女性68名)に分けられた.すべてのデータは,質問紙とインタビュー調査から抽出され,質問紙は個人的属性,学士力に関連するスキル(コミュニケーションスキル,チームワーク,問題解決力,リーダーシップ),運動行動(運動行動ステージ,運動自己効力感,意思決定バランス)から成っている.調査時期は,授業開始時,授業終了時,終了1年後であり,介入群には,コミュニケーションプログラムと行動変容技法を用いた授業を実施した.
【結果と考察】介入群の授業開始時と終了1年後の運動行動ステージを見てみると,向上した者の割合が56.7%,維持した者の割合が25.0%,低下した者の割合が18.3%という結果となった.また,授業終了時と終了1年後では,向上した者の割合が34.6%,維持した者の割合が37.5%,低下した者の割合が27.9%という結果となった.次に,介入群の身体活動量と学士力関連スキルの持続性を一元配置の分散分析を用いて調査した結果,「意思決定バランス(恩恵)」,「適切伝達力」,「チームワーク」,「リーダーシップ」において1年後の持続性が確認された.さらに,介入群と非介入群の終了1年後の結果をt検定を用いて分析した結果,「運動自己効力感」,「意思決定バランス(恩恵)」,「身体活動量」,「チームワーク」,「リーダーシップ」において有意差がみられた.これらの結果は,コミュニケーションプログラムと行動変容技法を用いた大学体育授業の効果が,「意思決定バランス」,「チームワーク」,「リーダーシップ」において,授業終了1年後も持続していたことを示唆している.さらに,インタビュー調査からは,「介入授業の何がきっかけで,運動行動や学士力関連スキルの変容が起こったのか」が明らかになった.