大学体育学
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事例報告
実技種目の異なる大学体育授業が社会人基礎力の育成に及ぼす影響
引原 有輝森田 啓若林 斉金田 晃一
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2016 年 13 巻 p. 16-25

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抄録

本研究では,大学体育授業が社会人基礎力の育成にどのような効果をもたらすかについて,実技種目の特性に応じた授業設計や運営と関連付けて検討することを目的とした.研究の対象とした実技種目は,ビーチバレーボール(BV),卓球(TT)ならびにトレーニング(TR)であり,各種目の受講者人数はそれぞれ65名,85名,85名であった.いずれの実技種目においてもその特性を踏まえながら,学生が主体的に教え合い,学び合う対人相互作用を意図した課題解決型の授業を展開した.そのため,各種目とも受講者を3~6人で構成したグループ(BV:6人,TT:3人,TR:3人)に配属させ,グループ主体で授業課題に取り組むように指示した.また受講者には,第2週目(PRE-test)と第12週目(POST-test)の授業にて,社会人基礎力について所定の質問紙を用いて自己分析するよう指示した.その結果,ネット型スポーツゲームであるビーチバレーボールや卓球が,身体活動や運動を取り入れた演習形式のトレーニングと比較して,主体性,働きかける力,課題発見力,傾聴力,ならびに状況把握力において学生の達成度が有意に向上した.これらのことは大学体育授業が学生の社会人基礎力を向上させる可能性があると同時に,扱う実技の授業設計や運営が学生の達成度に影響を及ぼすことを示唆するものであった.また,大学体育で扱う教材や授業環境に応じて適切な教育プログラムや教授法を検討しなければ,アクティブラーニング型の授業形態であってもその効果は小さくなるため,教育プログラム実行上の条件を適切に設定することが重要であると考えられた.

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© 2016 全国大学体育連合
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