大学体育学
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13 巻
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原著論文
  • 重松 良祐
    原稿種別: 原著論文
    2016 年13 巻 p. 3-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    家族や地域住民、あるいは高齢者本人に軽度認知障がい(mild cognitive impairment: MCI)を早期に見つけてもらうことは、認知症予防に貢献する。著者はスクエアステップという名称の新しい運動を開発した。スクエアステップは線で区切られたマットの上をステップしていく運動であり、廉価で導入しやすい。ステップの際のパターンは指導者によってデモンストレーションされる。パターンの種類は200あり、簡単なものから難しいものまである。認知機能の低い高齢者は正確にステップできないことが、先行研究で確認されている。本研究では、認知機能の低い高齢者、すなわちMCIの高齢者を検出できるスクエアステップのパターンを探索することを目的とした。65歳以上の高齢者168名にMoCAという認知機能テストを施し、併せてスクエアステップのパターン4種類をステップしてもらった(パターンAが簡単で、Dが難しい)。その結果、対象者の25%がMoCAで25点以下を呈し、MCIとみなされた。パターンの成功率はAで92.8%、Bで59.9%、Cで67.3%、Dで16.2%だった。MCI者の成功率は、いずれのパターンにおいても非MCI者よりも有意に低かった。性と年齢も含めたうえで決定木分析を施したところ、75歳以下にはパターンCを、76歳以上にはパターンBを提供したらMCIを検出できることが分かった。対象者全体のデータにこの結果を適用したところ、感度(69.0%)と特異度(76.2%)は高く、偽陽性率(23.8%)は低かった。結論として、この方法でMCIを検出できることが示された。自宅や地域でスクエアステップを実践している中でこれらのパターンを正確にステップできないと、家族・地域住民・本人が認知機能向上の必要性を認識することができる。

事例報告
  • 瀧本 真己, 西脇 雅人
    原稿種別: 事例報告
    2016 年13 巻 p. 9-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,大学体育授業において学生に感想を多く記述させる方法について検討することを目的とした.方法として,248名の大学生を無作為に通常群(n = 132)と介入群(n = 116)に分けた.全ての学生は,授業で講義とグループワーク(コンセンサスゲーム)を行い,授業の最後に,講義とグループワークの振り返りとして感想文を記述した.通常群は「感想」と記されている用紙を配り,一方,介入群は「感想(4つ以上)」と記されている用紙を配り,授業終了後に文字や文章の数と記述された文章の内容を評価した.結果として,介入群の文字数と文章数は,通常群に比して,有意に高値を示した(P < 0.001).1文あたりの文字数や短文と長文を書いた者の割合に両群の間に有意差は認められなかったものの,“4つ以上”の指示は,4文以上の文章を書いた者の割合が約4倍となった.さらに,介入群の記述文章は,通常群と比較して,コミュニケーションに関する内容が多かった(P < 0.05).さらに,コミュニケーションに関するキーワードを比較した結果,介入群では,「自分」,「グループ,または班」,「意見」の3つの単語が頻出していた(P < 0.05).結論として,大学体育授業において授業の感想を記述させる際,感想欄に「4つ以上」と指示すると,単に感想を記述させる場合に比して,より効果的に受講者の文字数や文章数を増大させ,授業内容に対する振り返りの効果を高める可能性のあることが示唆された.

  • 引原 有輝, 森田 啓, 若林 斉, 金田 晃一
    原稿種別: 事例報告
    2016 年13 巻 p. 16-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,大学体育授業が社会人基礎力の育成にどのような効果をもたらすかについて,実技種目の特性に応じた授業設計や運営と関連付けて検討することを目的とした.研究の対象とした実技種目は,ビーチバレーボール(BV),卓球(TT)ならびにトレーニング(TR)であり,各種目の受講者人数はそれぞれ65名,85名,85名であった.いずれの実技種目においてもその特性を踏まえながら,学生が主体的に教え合い,学び合う対人相互作用を意図した課題解決型の授業を展開した.そのため,各種目とも受講者を3~6人で構成したグループ(BV:6人,TT:3人,TR:3人)に配属させ,グループ主体で授業課題に取り組むように指示した.また受講者には,第2週目(PRE-test)と第12週目(POST-test)の授業にて,社会人基礎力について所定の質問紙を用いて自己分析するよう指示した.その結果,ネット型スポーツゲームであるビーチバレーボールや卓球が,身体活動や運動を取り入れた演習形式のトレーニングと比較して,主体性,働きかける力,課題発見力,傾聴力,ならびに状況把握力において学生の達成度が有意に向上した.これらのことは大学体育授業が学生の社会人基礎力を向上させる可能性があると同時に,扱う実技の授業設計や運営が学生の達成度に影響を及ぼすことを示唆するものであった.また,大学体育で扱う教材や授業環境に応じて適切な教育プログラムや教授法を検討しなければ,アクティブラーニング型の授業形態であってもその効果は小さくなるため,教育プログラム実行上の条件を適切に設定することが重要であると考えられた.

  • 石道 峰典, 西脇 雅人, 中村 友浩
    原稿種別: 事例報告
    2016 年13 巻 p. 26-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    2006年に社会人基礎力が経済産業省により提唱されて以来,社会人基礎力の育成は主要な大学教育の1つとなっている.一般に,社会人基礎力は,「前に踏み出す力(アクション)」,「考え抜く力(シンキング)」,「チームで働く力(チームワーク)」という3つの力で構成されている.さらに各力は,それぞれ3〜6の能力要素によって構成されている.最近,課題解決型学習やキャリア教育など社会人基礎力の育成を目的とした教育プログラムが大学教育において促進されている.その一方で,体育実技授業などの既存授業が社会人基礎力に及ぼす教育効果は不明瞭なままである.本研究では,体育実技授業が社会人基礎力の向上に及ぼす教育効果を明らかにするために,大学の既存の体育実技授業の受講による社会人基礎力の変化を検討した.さらに,体育実技授業への介入授業を実施し,社会人基礎力がより一層向上するか検討した.その結果,授業最終回の「考え抜く力(シンキング)」のスコアは,授業初回のスコアに比べ有意に増加していた(p<0.05).同様に,「チームで働く力(チームワーク)」のスコアも授業初回に対し授業最終回で有意に増加していた(p<0.05).さらに,社会人基礎力の3つの力を構成する能力要素である“創造力”,“発信力”,“柔軟性”及び“状況把握力”において授業初回に対し授業最終回でそれぞれ有意な増加を示した.一方で、授業介入による社会人基礎力のより一層の向上は認められず,介入手法の改善など今後の検討がさらに必要である.本研究は,大学での体育実技授業により社会人基礎力が向上したことを示すと同時に,既存授業である体育実技授業には社会人基礎力の改善を促す教育効果が本来的に備わっている可能性が示唆された.

  • 一川 大輔, 安田 智洋
    原稿種別: 事例報告
    2016 年13 巻 p. 35-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,15週にわたる大学体育授業の中でスポーツ活動を行った場合,その授業前後で大学生の下肢体力テスト結果を比較することであった。健康な男子大学生80名がこの研究に参加した。学生らは,大学体育授業のうち10週間,ソフトボール・フットサル・バスケットボールの何れかを選択し週1回実践した。測定は2・3回目(pre)と14・15回目(post)の授業時に実施した。測定項目は,身長・体重・体格指数(body mass index: BMI)・収縮期血圧・拡張期血圧・安静時脈拍,大腿部筋厚(前面・後面)・下腿部筋厚(後面)・筋力余裕度・膝関節伸展筋力・立幅跳・30秒椅子立ち上がりテスト(30-s chair stand test: CS-30)・閉眼片足立ち時間・握力であった。体重, BMI, 収縮期血圧,拡張期血圧はpreからpostで有意な低下(p < 0.05)を示した(体重: 62.8 ± 8.2 kg vs. 61.8 ± 7.4 kg, BMI: 21.5 ± 2.6 kg/m2 vs. 20.9 ± 3.3 kg/m2, 収縮期血圧: 118.6 ± 10.2 mmHg vs. 112.3 ± 10.3 mmHg, 拡張期血圧: 71.0 ± 9.1 mmHg vs. 65.8 ± 9.2 mmHg)。筋厚はpreからpostで大腿部後面と下腿部後面には有意な変化を認めた(p < 0.05)が,大腿部前面には有意差を認めなかった。筋力余裕度・立幅跳,CS-30はpreからpostで有意な増加(p < 0.05) を示した(筋力余裕度: 197.7 ± 17.8% vs. 202.4 ± 20.1%, 立幅跳: 211.4 ± 0.2 cm vs. 221.5 ± 0.2 cm, CS-30: 36.9 ± 4.0 回 vs. 39.2 ± 4.3 回)。膝関節伸展筋力は,preからpostで有意な変化(p > 0.05) を認めなかった(41.6 ± 9.2 kg vs. 43.3 ± 9.5 kg)。閉眼片足立ち時間はpreからpostで有意な増加(p < 0.05) を示した(60.4 ± 37.1 秒 vs. 77.0 ± 40.4 秒)。我々の研究の結果,大学体育授業における毎週の定期的なスポーツ活動が,大学生の下肢筋力・筋パワーに影響を及ぼすことが示唆された。

研究資料
  • 前田 正登
    原稿種別: 研究資料
    2016 年13 巻 p. 43-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    多くの大学におけるスポーツ用の土のグラウンドは,特定のスポーツを行う専用グラウンドではなく複数のクラブで共用している。本研究は,大学における多目的な土グラウンドの維持に関して現状を明らかにすることを目的とした。2つの大学の土のグラウンド(グラウンドT;81m × 111m の範囲,グラウンドR;92m × 91m の範囲)は,電子デジタルレベル計を用いて測量された。2つの測量されたグラウンドを使用している選手たちと7つのクラブの代表者に関して,質問紙(整地について,グラウンドでの受傷について,グラウンドコンディションに関する意識,など)によって,グラウンドコンディションが調査された。結果は以下のとおりであった。グラウンドTは中央付近からグラウンドの端に向かって徐々に低く傾斜しており,グラウンドRは野球のダイヤモンドからグラウンドの端に向かって同心円状に徐々に低く傾斜していた。グラウンドTは野球のダイヤモンド周辺のエリアにいくつかの比較的大きな起伏があったが,グラウンドRにはそのような起伏はなかった。グラウンドコンディションにおけるこのような違いは,クラブの選手たちのグラウンド整地とグラウンドの適切な使用方法についての意識が,それぞれの違いに繋がったものと考えられた。グラウンドTの使用者は,埋め込まれたグラウンドマーカーの突出とグラウンドの起伏に違和感を持っており,また,グラウンドRの使用者は,グラウンドの起伏と不良な水はけに違和感を持っていた。両方のグラウンドの使用者は,これらそれぞれのグラウンドの不良のために受傷したと回答していた。

  • 安部 久貴, 村瀬 浩二
    原稿種別: 研究資料
    2016 年13 巻 p. 53-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    指導者の言葉がけは選手の有能感、延いては内発的動機づけに影響を与えると考えられている。しかしながら、実際のスポーツ指導現場における指導者の言葉がけと選手の有能感について、観察法を用いて検討している研究は限られているのが現状である。そこで本研究では、指導現場における指導者の言葉がけと選手のスポーツ有能感の関係性について検討することを目的とした。ある大学男子サッカー部の一人の指導者と23名の選手が調査対象者であった。指導者の言葉がけは10週間記録され、以下の7つの指標に分類された。(1)ポジティブな評価、(2)ネガティブな評価、(3)直接的な示唆、(4)間接的な示唆、(5)統制的声かけ、(6)親和的声かけ、(7)その他。また、調査期間前後に各選手は10の下位尺度((1)状況に応じたパス&コントロール技能、(2)スピード、(3)ドリブル技能、(4)力強さ、(5)持久力、(6)守備技能、(7)リーダーシップ、(8)競技意欲、(9)ロングキック技能、(10)ヘディング技能)から構成される質問紙調査に回答した。その結果、選手の有能感と指導者の言葉がけに有意な関係性があることが明らかになった。まず、賞賛といった肯定的な言葉がけの頻度が、状況に応じたパス&コントロール技能やドリブル技能に関する有能感と負の関連性を示しているが明らかになった。この結果は、大学生サッカー選手は、指導者からの肯定的な言葉がけよりも自己比較や内在化された達成基準を基にして自身の能力評価をしていること示唆している。一方で、指導者から叱責などの言葉がけとパス&コントロール技能に関する有能感に正の関係性が確認された。競技スポーツにおいては、勝利という明確な目標を指導者と選手が共有していると考えられる。その場合、否定的な表現のプレーの指摘であったとしても、指摘を受けた選手は指摘の背後にある指導者の教授的意図を理解できると考えられる。その結果、否定的な評価でも状況に応じたパス&コントロール技能に関する有能感が向上した可能性がある。

  • 東山 昌央
    原稿種別: 研究資料
    2016 年13 巻 p. 60-71
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、一般女子大学生28名を対象としたクライミング授業の実践例を報告した。クライミングに必要な技能習得を促すこと、学習者の意欲喚起を促すことを意図し、1)基本技能の自己評価、2)パフォーマンステスト、3)登はん回数の変化、4)授業での体験内容の記録をおこなった。これらの取り組みの有効性と課題を検討するとともに、初心者の基本技能の習得という観点から、時期ごとの指導内容について考察した。

    1)基本技能の自己評価は、授業を通して向上した。事前のルート観察や、基本的な移動方法に関する項目は、前半から相対的に高い値で推移した。

    2)パフォーマンステストの結果、27名中14名(51.9%)の受講者に到達区間の増加がみられた。また、パフォーマンスの高低によって、ルート1周における運動時間、特定区間における動作に差がみられた。

    3)登はん回数は、授業が進むにつれて増加した。実技6回目以降は、初回授業に比べ有意に高い値を示した。

    4)体験内容に関するアンケートの結果、クライミングの知識・技能の習得、人間関係の変化、授業の楽しさや充実感のいずれの項目も高い値を示した。

    5)本研究の結果をふまえて、基本技能の段階的な指導内容を検討した。前半においては、ルートの事前観察、基本的な手足の移動方法の定着が主要な課題になると考えられる。これらの定着を図ったうえで、後半においては、上肢の負担を軽減させるための足位置、体のさばき方を理解させることが主要な課題になると考えられる。

  • 小林 勝法, 中山 正剛, 北 徹朗, 平工 志穗
    原稿種別: 研究資料
    2016 年13 巻 p. 72-81
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    大学の教養体育の学修成果について明らかにするために、大学卒業生に教養体育の授業の感想や思い出(エピソード)を自由記述で回答させる調査を行った。調査は2015年8月上旬にインターネットで行い、調査対象は次の3つの条件を満たすものとした。①4年制大学の在学中に教養体育の授業を受講したもの、②卒業して5年目までの30歳以下の男女、③3大都市圏にある私立大学の卒業生。有効回答の内訳は男性102人(38.6%)、女性162人(61.4%)であった。得られたおもな結果は以下の通りである。

    1.自由記述回答をテキストマイニングした結果、体育科目で楽しかったこととして、「体を動かしたこと」「男女混合であること」「他の学部や学科の学生と交流し仲良くなること」が主な回答であった。

    2.自由記述回答をテキストマイニングした結果、体育科目でためになったことや現在役立っていることは、男女に共通して見られたのは、「大学の体育授業で運動ができて良かった」「体を動かした」であり、男女別に見ると、男性に「定期的な運動習慣と健康」「筋力トレーニングについて知った」が、女性に「ストレッチの基礎、今も続けていること」が主な傾向であった。また、回答の多かった競技種目からは男女の選好の違いが見られた。

    3.人間性の涵養に関するようなエピソードは3件しか得られなかった。このようなインターネット調査では限界があるのかも知れない。インタビューや座談会調査のように時間をかけて記憶を紡ぎ出すような方法も検討する必要があると思われる。

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