2016 年 13 巻 p. 60-71
本稿では、一般女子大学生28名を対象としたクライミング授業の実践例を報告した。クライミングに必要な技能習得を促すこと、学習者の意欲喚起を促すことを意図し、1)基本技能の自己評価、2)パフォーマンステスト、3)登はん回数の変化、4)授業での体験内容の記録をおこなった。これらの取り組みの有効性と課題を検討するとともに、初心者の基本技能の習得という観点から、時期ごとの指導内容について考察した。
1)基本技能の自己評価は、授業を通して向上した。事前のルート観察や、基本的な移動方法に関する項目は、前半から相対的に高い値で推移した。
2)パフォーマンステストの結果、27名中14名(51.9%)の受講者に到達区間の増加がみられた。また、パフォーマンスの高低によって、ルート1周における運動時間、特定区間における動作に差がみられた。
3)登はん回数は、授業が進むにつれて増加した。実技6回目以降は、初回授業に比べ有意に高い値を示した。
4)体験内容に関するアンケートの結果、クライミングの知識・技能の習得、人間関係の変化、授業の楽しさや充実感のいずれの項目も高い値を示した。
5)本研究の結果をふまえて、基本技能の段階的な指導内容を検討した。前半においては、ルートの事前観察、基本的な手足の移動方法の定着が主要な課題になると考えられる。これらの定着を図ったうえで、後半においては、上肢の負担を軽減させるための足位置、体のさばき方を理解させることが主要な課題になると考えられる。