抄録
【⽬的】本研究の⽬的は,勤労者のメンタルヘルス不調の⼀次予防を促進する作業療法に資するために,勤労者を対象にインタビューを実施し,メンタルヘルスに影響する作業の意味づけの変化を検討することである.【⽅法】卒後2 年⽬の勤労者1 名に半構造化⾯接を実施し,対象者が語るメンタルヘルスに影響する作業とその関連事項を抽出して作業の意味づけの変化を検討した.【結果】対象者は,メンタルヘルスに役⽴ったと感じる作業として「ランニングをする」を挙げた.仕事のストレスが原因で⼼⾝の不調を感じ,その回復のために始めた作業であったが,回復後も達成感や健康であり続けるために継続するという意味づけの変化がみられた.また「スイーツを買って⾷べる」という作業も挙げた.これは,昔から好きな作業であったが,仕事がつらいと感じていた時期は⽣き抜くために切⽻詰まって⾷べていた.しかし,現在は他のことに⽬を向ける余裕ができ,頻度が減少したと語られた.【考察】⼼⾝の不調を感じたために始めた作業は⼆次予防の対策と⾔えるが,⼼⾝の不調を感じなくなっても健康であり続けるために継続するという⼀次予防に意味づけが変化したことから,メンタルヘルス不調の⼆次予防的な作業は,⼀次予防としても実⾏しうることが⽰唆された.また予防対策となる作業の遂⾏頻度は多いほど健康というわけではなく,健康だからこそ減少する作業があることも明らかになった.