2021 年 1 巻 2 号 p. 99-104
背景:皮下免疫療法は一世紀以上前からアレルギー性鼻炎に対し行われてきた治療法であるが,副反応の頻度が高いことが問題であり,皮下注射の約0.2%で全身性副反応が生じている。近年,舌下免疫療法が確立され,より安全に免疫療法が行われるようになったが,適応疾患やコンプライアンスの問題によりSCIT(Subcutaneous immunotherapy)の適応となる症例も存在する。今回当院でSCITを行った患者を調査し,安全性を検討した。
対象:2011年11月~2018年9月において当科でダニおよびスギ花粉アレルゲンエキスによるSCITを行った症例について診療録から検討を行った。
結果:5才から58才までの44例がRush法または100%増量法によるSCITを行い,全身性副反応を認めたのは9例(20.5%)である。ダニアレルゲンエキスのみの投与の2例と,スギ花粉とダニアレルゲンエキスの両方を投与した7例に全身性副反応を認めた。増量期と維持期で比較すると増量期で有意に全身性副反応が多かった(p<0.01)。全身性副反応を起こした全例に全身性の皮疹を認め,次に呼吸器症状が多かった。全例適切な処置がなされ回復している。
考察:スギ花粉,ダニアレルゲンエキスを用いたSCITによる全身性副反応の頻度は他施設の報告と同程度に認められた。