日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
総説
がん薬物療法の常識を覆した免疫チェックポイント阻害剤
倉田 宝保
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2024 年 4 巻 3 号 p. 127-130

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抄録

我が国における死亡原因の第一位は「がん」であり,がん治療は医療において非常に重要な分野の一つである。多くのがん腫において,早期の段階では外科手術や放射線治療を,遠隔転移を有する症例に対しては薬物療法が適応される。その中で薬物療法は殺細胞性抗がん剤から始まり,分子標的薬剤,さらには免疫チェックポイント阻害剤が開発され,以前とは比較にならないほど生存期間を延長させることに成功している。免疫チェックポイント阻害剤は他の2者と比較し,多くの点でこれまでのがん薬物療法の常識を覆している。殺細胞性抗がん剤や分子標的薬剤は転移を有する症例に対し,生存期間の有意な延長効果を示すが,治癒をもたらすことは難しい。一方,免疫チェックポイント阻害剤は限りなく治癒と思えるほどの長期生存を一定割合の症例で得ることが可能になった。そのほか,投与を中断しても再発なく治療効果が継続できる,副作用と効果が相関するなど他の種類の薬物療法とは異なる特徴を有している。そもそも免疫療法は効かないと以前は考えられていたが,免疫チェックポイント阻害剤は劇的な効果を示した。それはなぜなのか。本総説において,これまでの薬物療法の常識とはどんなものであったのか,そして免疫チェックポイント阻害剤はそれらの常識をどのように覆しているかを説明する。

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© 2024 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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