日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
総説
花粉-食物アレルギー症候群
―病態・診断・治療―
加藤 幸宣
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2024 年 4 巻 3 号 p. 131-138

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抄録

花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)は,特定の花粉抗原感作陽性者において,対応する食物との交差反応によって生じる食物アレルギーである。口腔症状に限局した症状であることが多いが,時に鼻炎症状・呼吸器症状・皮膚症状・ショックなどを生じる。PFASの病態は,IgE依存性のI型アレルギー反応であり,花粉抗原と相同性の高いタンパク抗原を含む食物を摂取すると,口腔粘膜に分布する花粉抗原特異的IgEと結合した肥満細胞が食物抗原と交差反応を起こし,口腔粘膜でアレルギー反応を起こす。PFASの有病率は生息する花粉の種類や花粉量の影響などによる地理的条件により異なる。シラカンバ非生息域でも,ハンノキ花粉やイネ科花粉など様々な原因花粉抗原があるため,PFASはあらゆる地域に存在する。PFASに関する基礎研究は病態解明や治療戦略に大きく寄与することが期待される。現在,PFAS患者が生食を安全に摂取できる有効な治療方法はなく,原因食物摂取の回避が予防の基本である。PR-10やprofilinは加熱処理により摂取可能となることが多いが,lipid transfer proteinsやgibberellin-regulated proteinsによるPFASは加熱処理に抵抗性であるため注意が必要である。PFASに対するアレルゲン免疫療法はまだ確立していないが,根治治療が期待できる方法であり,現在も様々な試みが行われている。本総説では,PFASの病態,疫学,臨床的側面に関する現在の研究状況を紹介し,PFAS患者の予後を改善するために取り組むべき課題を概説する。

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© 2024 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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