抄録
唾液腺に発生する良性腫瘍は多形腺腫が最も頻度が高く、基底細胞腺腫は比較的まれな腫瘍である。今回われわれは、耳下腺に発生し、組織学的に腺様嚢胞癌との鑑別を要した基底細胞腺腫の 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は右側耳下部腫脹を主訴とした 70 代、男性である。右耳下部に触診で 2 cm 程度の腫瘤を触知した。MRI にて右耳下腺深葉に腫瘍を認めた。T1 で低信号、T2 で高信号、Gd 造影で enhance された。右耳下腺深葉切除術により腫瘤を摘出した。当初の病理組織診断名は腺様嚢胞癌であったので放射線治療を開始した。しかし、組織学的に再検索した結果、腺様嚢胞癌に極めて類似しているが、被膜外への浸潤性増殖や末梢神経周囲浸潤を欠いていることから、“著明な篩状構造を呈する基底細胞腺腫”という病理組織診断名に訂正された。その訂正報告を受けた後、放射線治療を直ちに中止し、退院となった。術後、1 年以上経過した現在、耳下腺部、頸部リンパ節等に腫瘍の再発、転移は認められず現在定期的に経過観察中である。