耳鼻と臨床
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57 巻, 4 号
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原著
  • 喜友名 朝則, 比嘉 麻乃, 鈴木 幹男
    2011 年 57 巻 4 号 p. 143-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    2000 年から 2009 年までの 10 年間に琉球大学医学部付属病院耳鼻咽喉科を受診した声帯麻痺 130 例について検討した。男性が女性の 2.4 倍と多く、男性では 60 歳代に、女性では 70 歳代に最も多く認めた。麻痺側は左が右の約 3 倍多く、麻痺声帯位は副正中位に最も多かった。麻痺の原因としては術後性では大動脈瘤、心疾患に多く、甲状腺癌の割合が少なかった。麻痺の改善率は全体で 25.4%であり、挿管性は 81.8%、特発性は 43.8%であった。心疾患手術後に声帯麻痺を起こす可能性についても認識する必要があると考えられた。
  • 宮原 裕, 鎌倉 綾, 笹井 久徳, 中村 恵, 松代 直樹, 梶川 泰, 成尾 一彦
    2011 年 57 巻 4 号 p. 150-157
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    2000 年 7 月から 2009 年 3 月の間に耳下腺腫瘍手術を施行した 125 例を検討した。男性 59 例、女性 66 例で、60 歳代が多く (15歳 - 88 歳)、平均年齢は 54.6 歳であった。病理組織学的には多形腺腫が 62例 (49.6%) と最も多く、次いでワルチン腫瘍が 45例 (36.0%) であった。多形腺腫は女性に多く、ワルチン腫瘍は男性に多く、平均年齢はワルチン腫瘍の方が高年齢であった。摘出腫瘍の大きさは、10 - 160 mm大で、平均は 29.9 mmであった。術後合併症として顔面神経麻痺 28 例 (22.4%)、唾液漏 5 例 (4.0%) を認め、頻度は従来の報告とほぼ同等だった。Frey 症候群は認めなかった。耳下腺良性腫瘍に対しては、合併症の可能性も含め患者ならびに家族への十分なインフォームド・コンセントを行い、積極的に根治治療を行うのがよい。
  • 君付 隆, 松本 希, 柴田 修明, 玉江 昭裕, 大橋 充, 野口 敦子, 堀切 一葉, 小宗 静男
    2011 年 57 巻 4 号 p. 158-163
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    語音聴力検査における最高明瞭度は聴覚閾値の上昇に伴い低下する。しかし、どの程度の難聴で最高明瞭度がどの程度になるか明らかな基準はない。今回、604 耳において純音聴力検査閾値と最高明瞭度の相関関係を解析した。明らかな相関関係を認め([最高明瞭度]= - 0.92 ×[聴力レベル] + 117.04、R = - 0.83)、閾値の上昇に伴い最高明瞭度は低下した。伝音難聴では聴力レベルと比較して最高明瞭度値が良好であった。聴神経腫瘍では、中等度以上の難聴症例で純音聴力検査の悪化以上に最高明瞭度が低下していた。スピーチオージオグラム曲線の傾きは正常、伝音難聴、内耳性難聴、後迷路性難聴において差を認めなかった。ロールオーバーの陽性率は内耳性難聴で 60.6%、聴神経腫瘍で 56.6%と差を認めなかった。
  • 児島 雄介, 武藤 俊彦, 橋本 健吾, 西川 奈見, 塩田 絵里子
    2011 年 57 巻 4 号 p. 164-169
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    約 1 カ月の間に小児深頸部膿瘍を 2 例経験した。最近では小児深頸部膿瘍に対する保存的治療も多くなってきている。1 例目は当初抗菌薬投与を行ったが症状改善認めず、外科的排膿を行った。2 例目は初診時より耳下部から頸部にかけての腫脹、発赤、開口障害、頸部を側屈させるなどの症状強く早期に外科的排膿を行った。2 例とも全身麻酔下にて口腔内より切開排膿を行い、1 例目で術後 5 日目、2 例目で術後 8 日目に退院となった。2 例ともに術後早期に症状の改善がみられ、外科的排膿が有効であったと考えられた。
  • 正垣 直樹, 速水 康介, 森 一功, 土井 勝美, 前西 修
    2011 年 57 巻 4 号 p. 170-176
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    Oncocytic carcinoma (malignant oncocytoma) は極めてまれな悪性腫瘍であり、症例は少なく診断基準や治療方針は確立されていない。今回われわれは顎下腺および耳下腺を原発とする oncocytic carcinoma の 2 例を経験したので報告する。症例 1 は 64 歳の男性で耳下腺原発の oncocytic carcinoma である。手術加療および局所への放射線治療追加を行い原発巣の制御は可能であったが、術後 2 年が経過し、遠隔転移が出現した。化学療法を行うも術後 4 年後に死亡した。症例 2 は 58 歳の男性で顎下腺原発の oncocytic carcinoma である。第一選択として外科的治療を行った。術前待機期間に化学療法としてTS-1® (120 mg/日)を 2 週間内服し腫瘍の縮小が認められた。根治手術が可能であったが、今後も転移や再発に対し厳重な follow up が必要と考えられた。
  • 菅村 真由美, 二村 聡, 坂田 俊文, 佐藤 公治, 末田 尚之, 福崎 勉, 山野 貴史, 山下 真一, 中川 尚志
    2011 年 57 巻 4 号 p. 177-182
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    唾液腺に発生する良性腫瘍は多形腺腫が最も頻度が高く、基底細胞腺腫は比較的まれな腫瘍である。今回われわれは、耳下腺に発生し、組織学的に腺様嚢胞癌との鑑別を要した基底細胞腺腫の 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は右側耳下部腫脹を主訴とした 70 代、男性である。右耳下部に触診で 2 cm 程度の腫瘤を触知した。MRI にて右耳下腺深葉に腫瘍を認めた。T1 で低信号、T2 で高信号、Gd 造影で enhance された。右耳下腺深葉切除術により腫瘤を摘出した。当初の病理組織診断名は腺様嚢胞癌であったので放射線治療を開始した。しかし、組織学的に再検索した結果、腺様嚢胞癌に極めて類似しているが、被膜外への浸潤性増殖や末梢神経周囲浸潤を欠いていることから、“著明な篩状構造を呈する基底細胞腺腫”という病理組織診断名に訂正された。その訂正報告を受けた後、放射線治療を直ちに中止し、退院となった。術後、1 年以上経過した現在、耳下腺部、頸部リンパ節等に腫瘍の再発、転移は認められず現在定期的に経過観察中である。
臨床ノート
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