2011 年 57 巻 5 号 p. 189-195
1979 年から 2010 年までに近畿大学医学部附属病院耳鼻咽喉科にて経験した甲状腺原発扁平上皮癌例 5 例についてその発生機序や臨床的特徴を検討し報告した。発生機序に関しては、4 例は乳頭癌からの移行、1 例は胎生期の遺残や迷入の扁平上皮からの癌化が疑われた。甲状腺原発扁平上皮癌の進行は早く予後不良であり、その経過は未分化癌に類似する。根治手術できた症例の局所制御は良好であるが、その後の重複癌の発生にも気をつける必要がある。また他臓器からの転移の可能性も考慮に入れ、常に徹底的な全身検索が必要である。