耳鼻と臨床
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II. 切除可能 T3、T4 上顎洞扁平上皮癌における手術の位置付け — 当院における治療戦略 —
上顎洞扁平上皮癌 T3、T4 症例における手術の位置付け - 当院治療例の検討 -
宮崎 眞和林 隆一篠崎 剛富岡 利文
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2012 年 58 巻 Suppl.1 号 p. S44-S51

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抄録

1992 年 7 月から 2006 年 12 月までに当院で治療を行った上顎洞原発扁平上皮癌 T3、T4 一次例は 87 例であった。平均観察期間は 85.9 カ月で 5 年粗生存率は 47.3%で局所制御率は 60%であった。T3 症例では 5 年粗生存率が 59.0%で T4a 症例でも 51.6%であったが、T4b 症例では全例死亡しており、生存期間中央値は 9.1 カ月であった。治療の内訳は上顎部分切除を行った後に 5-FU による持続動注と放射線の同時併用を行う三者併用療法が 66 例で、上顎全摘出を主体とした一塊切除での手術療法が 20 例、その他 1 例であった。三者併用と一塊切除の比率は T3、T4b ではそのほとんどが三者併用療法で、T4a では 2:1 であった。一塊切除ではその多くが遊離皮弁での再建とともに術後照射を行い、三者併用と一塊切除の症例群で治療成績に差は認められなかったが、患側眼球の視機能温存率は一塊切除群では 25%、三者併用群で 42%であった。今後、更なる機能温存と T4b 症例での成績向上のため、超選択的動注併用の放射線療法も考慮される。

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© 2012 耳鼻と臨床会
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