耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
Print ISSN : 0447-7227
ISSN-L : 0447-7227
原著
溶連菌を起炎菌として発症した成人難治性急性中耳炎の 1 例
江浦 正郎伊藤 恵子
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 61 巻 3 号 p. 85-96

詳細
抄録

成人の難治性急性中耳炎の起炎菌では、血液寒天培地上でムコイド型コロニーを形成するムコイド型肺炎球菌が知られており、これによる中耳炎はムコーズス中耳炎と呼ばれる。今回われわれはムコーズス中耳炎と類似の臨床的特徴を示した A 群 β 溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus : GAS)による難治性急性中耳炎を経験した。症例は 55 歳の女性で咽頭痛、左耳痛・耳漏を主訴に来院し、左外耳道腫脹、左漿液性耳漏、左混合難聴を認めた。左急性中耳炎と診断し、ガレノキサシン投与開始、受診 3 日目にセフトリアキソンとアモキシシリンに変更、さらに 6 日目にはミノサイクリンに変更したが左耳漏を制御できなかった。7 日目に施行した耳漏の GAS 抗原検出迅速テスト(陽性)から GAS による急性中耳炎と診断し、入院の上ピペラシリンとステロイドの点滴静注を行った。入院 2 日目には耳漏は停止し、その後順調に軽快した。成人の難治性急性中耳炎の場合、ムコーズス中耳炎のみならず、GAS による急性中耳炎も考慮すべきである。

著者関連情報
© 2015 耳鼻と臨床会
前の記事 次の記事
feedback
Top