2019 年 65 巻 2 号 p. 61-68
医原性上顎洞異物の大部分は歯科治療に伴うものである。今回根管充填剤であるガッターパーチャポイントによる医原性上顎洞異物に伴った上顎洞炎 2 例を経験した。いずれの症例も上顎洞底部から連続して異物が存在しており、Endoscopic modified medial maxillectomy を行い異物の摘出と感染巣の除去を行った。術後は原因歯牙の温存ができ、良好な経過を得ることができた。上顎洞異物の摘出アプローチの選択には低侵襲性、確実性に加え、術後経過や患者の歯牙温存の希望を考慮する必要があり、歯科医師との十分な連携が必要である。特に根管充填剤による異物は医療行為に起因するため、異物の残存や症状の再燃がある場合は医療サイドへの不満を増幅させる可能性が高い。低侵襲性、歯牙温存に加えて上顎洞底部への操作が可能な EMMM は根管充填剤による医原性上顎洞異物の摘出、感染巣の除去に優れた手段であると考える。