2019 年 65 巻 3 号 p. 80-86
声門閉鎖不全に対する治療として、声帯内自家脂肪注入術 (以下、脂肪注入術) およびシリコンブロックを使用した甲状軟骨形成術Ⅰ型変法を当科では行っている。本研究は局所麻酔下で経皮的に脂肪注入術を行った症例をまとめ、臨床的検討を行うことを目的とした。対象は 14 年間で脂肪注入術を行った 55 例 (平均年齢 58.7 歳、男性 29 名、女性 26 名)。声帯麻痺は 43 例、声帯萎縮は 6 例、声帯溝症は 6 例。当科の脂肪注入術の方法は、脂肪は腹部から採取し、輪状甲状間膜から経皮的に声帯内筋層に注入し、十分な声門閉鎖を得られたと判断したところで終了する。平均の術前 MPT は 8.7 秒、術後 1 カ月の MPT は 13.1 秒、術後 3 カ月の MPT は 12.1 秒、術後 1 年の MPT は 13.2 秒、術後 2 年の MPT は 12.3 秒だった。局所麻酔で経皮的に行う脂肪注入術では、音声や自覚的誤嚥、咳嗽効率の改善を認め、有効な術式であることが再確認できた。