遠隔転移を伴う場合の頭頸部癌の主治療は抗腫瘍薬の投与である。投与にあたってさまざまな有害事象が発生するが、致死的なものはまれである。今回、シスプラチンとセツキシマブの投与によって、総腸骨動脈に巨大な血栓を来し、急性下肢虚血に至った口腔癌の症例を経験した。本症例は、シスプラチン、5-FU、セツキシマブ投与継続中に、急に左下肢の痺れから麻痺に至ったが、速やかに血栓除去を行うことで救命および下肢温存が可能であった。担癌患者は、それ単独でも 4 − 7 倍の血栓症のリスクを伴うが、シスプラチンとセツキシマブの併用レジメンの抗腫瘍薬投与時は、よりそのリスクが高まる。血栓塞栓症は、発症すると急速に致死的な結果になる場合もあることから、まれで遭遇することが少ない病態とはいえ、念頭に置いた上で、抗腫瘍薬による治療を行っていく必要があると思われた。