Fisher 症候群(FS)は IgG 抗 GQ1b 抗体による運動失調、外眼筋麻痺、腱反射減弱または消失を三徴とする末梢神経疾患である。今回われわれは回転性めまいを主訴とした 70 歳女性の FS 症例を経験した。初診時に左側方注視眼振を認めた。さらに腱反射低下も認めた。経過中に外眼筋麻痺を認め FS と診断され上記抗体陽性であった。症状は免疫グロブリン療法で改善した。上記抗体が小脳脳幹にも影響し、回転性めまいを訴えたと推察した。また、耳鼻咽喉科受診後に FS と診断された報告例 12 例から FS の耳鼻咽喉科受診時症状と現症を検討した。ふらつきと複視が各々 5/12 例(42%)、回転性めまいが 2/12 例(17%)であ った。複視の 4/5 例(80%)は近医から副鼻腔炎による複視として紹介された症例であった。FS が耳鼻咽喉科を受診する際は平衡障害に関連したふらつき、めまいで受診する場合と副鼻腔炎による複視として受診する場合に大別された。
真珠腫性中耳炎、乳突洞炎に合併した S 状静脈洞血栓症の 2 例を経験した。症例 1 は 50 歳代男性。右真珠腫性中耳炎に対し右鼓室形成術・乳突削開術施行 7 年後に頭痛を訴えた。MRI で右頸静脈球より S 状静脈洞、横静脈洞にかけての血栓形成を認めた。抗凝固療法、抗菌薬投与を行い、中耳根本術を施行した。症例 2 は 50 歳代男性で、左耳後部腫脹を主訴に来院した。乳様突起炎、S 状静脈洞血栓症を認め、左耳後部より切開排膿術を行い、抗凝固療法、抗菌薬投与を行った。耳性頭蓋内合併症は中耳炎の日常診療で常に念頭に置く必要がある。
遠隔転移を伴う場合の頭頸部癌の主治療は抗腫瘍薬の投与である。投与にあたってさまざまな有害事象が発生するが、致死的なものはまれである。今回、シスプラチンとセツキシマブの投与によって、総腸骨動脈に巨大な血栓を来し、急性下肢虚血に至った口腔癌の症例を経験した。本症例は、シスプラチン、5-FU、セツキシマブ投与継続中に、急に左下肢の痺れから麻痺に至ったが、速やかに血栓除去を行うことで救命および下肢温存が可能であった。担癌患者は、それ単独でも 4 − 7 倍の血栓症のリスクを伴うが、シスプラチンとセツキシマブの併用レジメンの抗腫瘍薬投与時は、よりそのリスクが高まる。血栓塞栓症は、発症すると急速に致死的な結果になる場合もあることから、まれで遭遇することが少ない病態とはいえ、念頭に置いた上で、抗腫瘍薬による治療を行っていく必要があると思われた。
披裂と喉頭蓋の腫脹を来した後に川崎病再発と診断された 5 歳男児例を経験したので報告する。発熱を伴う頸部リンパ節腫脹に対し小児科にて抗生剤投与が施行されていたが、症状の改善が得られないため、第 6 病日に耳鼻咽喉科へ診察依頼があった。両頸部に圧痛を伴うリンパ節腫脹を認め、喉頭ファイバースコピー検査にて左披裂と喉頭蓋の腫脹がみられた。急性喉頭蓋炎の可能性を考え耳鼻咽喉科医も経過観察に参加したところ、第 7 病日に背部の皮疹、眼球結膜の充血が出現し、川崎病の診断となった。ガンマグロブリン製剤の投与にて速やかに症状は改善した。年長児の川崎病は非典型的な経過をたどることがあるため、治療に抵抗する年長児の上気道炎例を診察する際には、川崎病を念頭に置いた慎重な経過観察が必要であると考えられた。